社員による事業承継を成功させるポイント、雑用を極めて乗り切ろう

そもそも会社を引き継ぐこと、すなわち事業承継とはどういうことでしょうか。会社の経営なんて自分には今まで想定したこともなかった。

でも社長が自分に引き継ぐと言っている以上、どこかで腹を決めなければなりません。

そのため、事業承継がどういものかを勉強してみましょう。

社長の仕事、本当は雑用ばかり

社長の仕事は会社が儲け続けられるように、社員を支援し続けることです。よく、社長が営業やモノつくりの陣頭指揮をとり、社員を指導していくようなことが言われます。

しかし、事業承継をするような会社は、既に顧客もいます。また、販売する製品やサービスも確立されています。さらに、管理の仕組みも不完全だとしても、一応機能しています。

また、働く人もすでにおり、生産やサービス提供に必要な設備もすでにある程度揃っています。

つまり、社員のあなたが社長になるということは、営業からモノつくりなどの陣頭指揮をとり、社員を引っ張っていくようなことではありません。

社長は、結局社員たちができない部分の仕事を引き受ける役割と開き直ればとえも楽です。

そして、その仕事は、既にいるお客様との関係を維持するために人間関係を継続することです。また、業界の横のつながりを維持し、情報を入手することです。

これらは、現業を行っている社員にとっては荷が重いというか、相手も社長以外では対応してくれないことが多いのです。

つまり、これらの仕事は、営業やモノつくりとは異なり、いわば雑用と言えるかもしれません。

現在の社長と話し合えば、実行可能なものばかりであることに気付くはずです。

株式で経営権を確保する

会社の発行する株式は、その過半を持てば、社長を交代させることができます。よく経営権という言葉を耳にすることがあるかと思います。

これは、株式の過半数(50%+1株)以上を持っていないと、社長の首が危ないということです。

したがって、中小企業で会社の社長を引き受ける時点で、株をそれだけ譲り受けていないと、将来解任される危険性があるのです。

ただ、社員に会社を引き継がせるというのであれば、全株を社長もしくは、その他の社員を合わせて100%保有すべきです。それが経営権を持つことだと思ってください。

株とは恐ろしいもので、甘く見てはいけません。

儲けられる会社か確認する

社員が会社を引き継げたのはいいが、全く儲けられない状態であったということは起こりえます。

何故かというと、社員は営業やモノつくりに専念しており、会社が儲かっているかどうかを確認する機会がないのが普通です。

つまり、会社を引き継ぐまで、情報開示がされていないことも多いのです。

したがって、会社を引き継ぐに際し、必ず決算内容は確認しましょう。

それから事業承継の決断をするのが鉄則です。

会社の保有する財産や債務を確認する

決算書だけでは、会社の経営状態が分からないことがあります。

特に、記載されている在庫や営業債権が、それぞれ販売ができ、また、回収可能かは数字だけ見ていても分かりません。

会社を引き受けてから、在庫は架空又は滞留品であったようなこともあります。また、売上金などの債権も回収できないものかもしれないのです。

さらに、社員の未払退職金や過去の税務リスクなど、きりはありません。

これらを、会社をそのまま引き継ぐなら、しっかり調査することです。

第三者への引き継ぎの場合は、決算内容はきびしくチェックされます。それと同じことが、社員への承継でも変わることはないのです。

社員の同意を得る

たまに起こるのは、新社長が彼なら辞めるというようなケースです。身内の事業承継でも起こりますが、まだ前社長の押さえがききます。

しかし、社員が社長となると、それを面白くないと思う人も出てきます。

つまり、社長が交代し事業承継されるタイミングで、今後の会社つくりと運営につき、じっくり社員と協議する場を持ちましょう。

顧客と取引先の了解を取り付ける

継続して顧客を維持することは、事業承継の生命線とも言えます。会社の売却のような場合、最も重視されるのが、顧客の維持です。

会社をひき継いだものの、一斉にお客様が離反してしまうと、一気に経営は悪化します。

したがって、社長の交代に際し、確実にお客様を維持し続けるため、お客様の了解を取り付ける必要があるのです。

金融機関との信頼の継続

金融機関と会社の関係は、お金の貸付と預金の預け入れがメインです。金融機関は、会社がどの程度金利や資金預け入れで儲けさせてくれたかを重視します。つまり、過去の取引実績を新社長になっても継続してもらうことが、互いに重要なのです。

一朝一夕に信用を気づくことはできません。したがって、新社長になると、当然、融資などの取引に慎重にはなります。

したがって、事業承継時に金融機関にお知らせした方がいいでしょう。また、そこで、信頼関係の継続を約束することは、今後の会社の成長にも有益です。

会社の譲渡にかかる資金はゼロを目指す

会社を引継ぎ、社長になるということは、どうもお金が必要な感じがしますよね。

確かに、長い社歴で儲けられる商品と顧客がいる会社は、価値があります。第三者が欲しいと言えば、高額になることもあります。

しかし、社員に事業承継する場合、そこで高額な対価を求められるというのはなんか変です。

社員にしてみれば、過去に儲けた利益が欲しいのではなく、これから社員が安定して生活を送れるようになればいいだけです。

ただ、会社の経営権つまり株式を無償で貰うとなると税務署が高額な贈与税を請求してくる可能性もあります。

また、そもそもその株式を社員が対価を払って購入するということも考えにくいものです。

つまり、社員が会社を引き継ぐときに、贈与税を払い、株の対価を支払うというのはナンセンスです。社員が会社を引き継ぐときは、資金を用意することなく行うというのが原則です。

どんな手順で事業承継するか

会社の株を社員に譲る最も簡単な方法は、無償で譲渡することです。しかし、先にもいったように、我が国では高価なものを無償で贈与するとなると、高額な贈与税を課されます。

ここが、社員の事業承継における最大のハードルとなっています。税の負担なく会社を引き継ぐこと、これについては、投稿「社員の事業承継でお金のかからない方法を選択する」をご覧ください。