社員への事業承継は、「のれん分け」で速攻解決

2026年7月13日 最終更新日時 : 2026年7月24日
miokaikei

ご相談内容

個人事業として長年商売を続けてきた経営者の方から、「親族や長年貢献してくれた社員(番頭など)に事業を承継させたいが、税金がどうなるのか不安だ」というご相談をいただきました。

不動産や預貯金、株式などを無償で譲り受けると贈与税がかかることは広く知られていますが、「商売そのもの」を引き継ぐ場合、どのような課税が生じるのかが分からず、承継に踏み切れない状況でした。

課題

事業承継において、相続税や贈与税では、事業の「のれん」は財産的価値のある「営業権」として課税対象となります。

のれん(営業権)の評価額は、毎年生じている事業所得(医師や税理士のような一代限りの事業を除く)をベースに算出されます。不動産所得などは評価の対象外ですが、すべての事業をそのまま譲り受けるとなると、「のれんの評価額が高くなり、多額の税金がかかるのではないか」という懸念を払拭することが課題でした。

また、個人事業で利用している店舗(不動産)や設備をどう引き継ぐかも論点となっていました。

当事務所の対応

昔から行われている「のれん分け」の考え方を整理し、課税関係を明確にしてご提案しました。
具体的には、以下の点についてアドバイスを行いました。

  1. のれん(営業権)の評価の実態説明
    税務上、のれんの評価は過去の事業所得をベースに複雑な計算を行いますが、実際には一定の控除があるため、評価額がつき課税対象となるケースはほとんどないことをご説明しました。
  2. 引き継ぐ資産の切り分け(実物資産と無形資産)
    「同じ屋号を使うが、店舗の賃借料や設備は後継者が自身のリスクで負担する」という新しいお店を出す形ののれん分けと、すべての事業を譲るケースの違いを整理しました。
    そのうえで、のれん分けするものは「屋号、ノウハウ、得意先、職人の技術」といった無形の財産価値に限定するようご提案しました。
  3. 不動産・設備は「譲らない」選択
    不動産や設備を無償で譲渡すると当然課税されるため、これらは所有権を譲らず、後継者に貸与する形をとるようアドバイスしました。

結果

のれん(営業権)への課税リスクが実務上は極めて低いことが理解され、経営者は安心して事業承継を進めることができました。

また、不動産や設備等の実物資産は譲らず、屋号やノウハウだけを引き継ぐ手法をとることで、予期せぬ贈与税などの税負担を回避し、社員や親族へスムーズに「のれん分け」を行うことができました。

この事例のポイント

親族への相続や贈与、あるいは早めに社員にのれん分けをする場合でも、のれん(営業権)に多額の税金がかかる心配は実務上ほとんどありません。

重要なのは、「不動産などの実物資産」と「屋号やノウハウなどの無形資産(のれん)」を切り分けて考えることです。

今後、後継者不在や資金力不足を理由に事業の存続が困難になり、廃業を検討するケースが増えると考えられます。しかし、昔からある「のれん分け」の手法と現代の税務を正しく組み合わせることで、後継者問題もお金の問題も乗り越えることができます。

事業承継のお問い合わせはこちらへ