エンディングノートとは?何を書く?遺言書との違いと相続で役立つ書き方

「エンディングノートを書いておいた方がいいとは思うけれど、何を書けばいいのか分からない」
このように感じている方は少なくありません。
エンディングノートというと、葬儀やお墓について希望を書くもの、という印象を持たれがちです。 しかし、相続の実務を数多く見ていると、もっと大切な役割があることが分かります。
自分が亡くなった後、あるいは病気などで自分自身が判断できなくなったときに、家族が「何を確認すればよいか分からない」という状態を防ぐことです。
財産はどこにあるのか。
借入金はないのか。
生命保険には入っているのか。
遺言書はあるのか。
介護や医療についてどのように考えているのか。
こうした情報が一か所に整理されているだけで、ご家族の負担は大きく変わります。
エンディングノートとは
エンディングノートとは、自分の人生や財産、家族への希望などを整理して残しておくためのノートです。 決められた書式があるわけではありません。
市販のエンディングノートを使っても構いませんし、普通のノートでも、パソコンで作成しても構いません。
重要なのは、きれいに完成させることではありません。
これだけでも十分なスタートになります。
エンディングノートと遺言書は違います
ここは特に重要です。
エンディングノートに 「長男に自宅を残したい」 「預金は長女に渡したい」 と書いても、それだけで遺産分割を法的に決められるわけではありません。
エンディングノートは、自分の希望や情報を家族に伝えるためのものです。 一方、財産を誰にどのように承継させるかを法的な形で残すためには、遺言書を検討する必要があります。
- 家族への希望を伝える
- 財産や連絡先を整理する
- 医療・介護・葬儀について考えを残す
- 財産の承継方法を定める
- 一定の法律上の方式が必要
- 相続開始後の遺産分割に大きく関係する
つまり、どちらか一方を作ればよいというものではありません。
エンディングノートで情報と思いを整理し、必要な部分を遺言書にする。
この順番で考えると非常に整理しやすくなります。
最低限書いておきたい7つのこと
1.家族・親族・連絡してほしい人
家族や親族だけでなく、いざというときに連絡してほしい友人、仕事関係者、専門家なども記載しておきます。
税理士、司法書士、弁護士、保険代理店など、財産に関係する専門家の連絡先も重要です。
2.預貯金・証券・不動産などの財産
銀行名、証券会社、不動産などを一覧にします。
金額まで常に正確に更新する必要はありません。 家族が「どこを調べればよいか」が分かれば大きな助けになります。
最近では、通帳のないネット銀行やネット証券も増えています。 本人以外には存在そのものが分からないことがありますので、特に記録しておきたい項目です。
3.借入金・保証・未払金
財産というと、預金や不動産などプラスの財産ばかりを考えがちです。
しかし相続では、借入金などの債務も重要です。
住宅ローン、賃貸不動産の借入金、事業に関係する借入金、保証関係などについても整理しておきましょう。
4.生命保険
生命保険については、保険会社、保険の種類、受取人などを分かる範囲で書いておきます。
死亡保険金は、契約者・被保険者・受取人の関係によって税金の扱いが変わるため、相続対策を考えるうえでも重要です。
また、保険に加入していることを家族が知らなければ、保険金の請求自体が遅れてしまう可能性があります。
5.医療・介護についての希望
自分で意思表示ができなくなったとき、どのような医療や介護を希望するのか。
すべてを細かく決める必要はありません。
「できる限り自宅で過ごしたい」 「家族だけで判断せず主治医と相談してほしい」 など、自分の考えを残しておくだけでも、ご家族の判断材料になります。
6.葬儀・お墓について
葬儀の規模、お墓、菩提寺、宗教などについて希望があれば書いておきます。
葬儀については、亡くなってから短期間で多くの判断をしなければなりません。 本人の希望が少しでも残っていると、ご家族は判断しやすくなります。
7.遺言書の有無と保管場所
遺言書を作成していても、家族がその存在を知らなければ困ります。
エンディングノートには、
- 遺言書を作成しているか
- どこに保管しているか
- 誰に相談して作成したか
などを書いておきましょう。
相続の専門家から見ると「財産一覧」が特に重要です
実際に相続が発生すると、最初に行う重要な作業の一つが財産の確認です。
預金、不動産、株式、生命保険、自社株、会社への貸付金などを調べていきます。
ところが、ご本人しか知らない財産があると、ご家族は一つずつ探さなければなりません。
特に、会社経営者や不動産を複数所有している方の場合、個人の財産と会社との関係が複雑になっていることがあります。
- 自社株
- 会社への貸付金
- 会社からの借入金
- 賃貸不動産
- 不動産取得時の借入金
- 複数の金融機関の預金
- 証券口座
- 生命保険
この一覧があるだけでも、相続が始まった後の調査は大きく変わります。
財産や相続の状況を、一度整理してみませんか。
「何から整理すればいいのか分からない」という段階でも構いません。 不動産、預貯金、自社株、保険、遺言などを一緒に確認します。
エンディングノートだけでは足りない場合もあります
エンディングノートを作る過程で、
- 長男に会社を継がせたい
- 自宅は妻に残したい
- 子ども同士で揉めないようにしたい
- 不動産が多く、相続税が心配
- 相続税を払う現金が足りるか分からない
といった問題に気づくことがあります。
ここから先は「情報を残す」だけではなく、相続そのものを設計する必要があります。
遺言書を作るのか。
生前贈与を行うのか。
生命保険をどう使うのか。
不動産を誰に承継するのか。
相続税の納税資金をどう準備するのか。
こうした問題は、それぞれを別々に考えるのではなく、一つの相続として考えることが大切です。
まずは完璧に書こうとしないこと
エンディングノートがなかなか完成しない最大の理由は、最初からすべてを書こうとすることです。
最初は3項目だけでも構いません。
- どこに財産があるか
- 遺言書があるか、どこにあるか
- 何かあったとき誰に連絡してほしいか
一度書いておけば、後から追加できます。
そして財産や家族の状況が変わったときに、時々見直せばよいのです。
エンディングノートを書くことは、自分の相続を考えること
エンディングノートを書いていると、自分でも気づいていなかったことが見えてきます。
「この不動産は誰に残すのか」
「この借入金はどうなるのか」
「生命保険の受取人は今のままでよいのか」
「遺言書を作った方がよいのではないか」
つまり、エンディングノートは単なる記録帳ではありません。
自分の財産と家族について考えるための入口でもあります。
三尾会計事務所では、相続が発生した後の相続税申告だけでなく、生前の財産整理、遺言、相続設計、遺言執行まで、一つの流れとして相続を考えています。
まだ何も決まっていない段階でも構いません。
まず自分の財産を整理してみる。 そこから、必要な対策が見えてきます。


