二代目社長を辞めたいと思ったときに考えたいこと|後継者が苦しくなる5つの原因

「もう、二代目社長を辞めたい」
先代と比べられる。年上の社員には遠慮する。
責任は自分にあるのに、自由に決められない。
困っても、本当に相談できる相手がいない。
こうした状態が続けば、
「自分は社長に向いていないのではないか」
と考えるようになることがあります。
二代目社長は、社長になった瞬間から周囲に「経営者」として見られます。
社員からは社長。取引先からも社長。金融機関からも社長。
しかし本人の中では、 まだ先代の背中を追っている途中かもしれません。
しかも、 社長になったからといって、 すべてを自由に決められるとは限りません。
二代目社長が「辞めたい」と感じるのは、本人が弱いからとは限りません。
先代との役割、社員との関係、権限、経営数字、仕事の集中、相談相手の不在など、 会社側の構造が苦しさを生んでいることがあります。
二代目社長が「辞めたい」と感じる5つの原因
1.責任はあるのに、十分な権限がない
二代目社長になって最も苦しくなりやすいのが、 責任と権限が一致していない状態です。
社長として結果を求められる。
しかし、重要な判断は先代が行う。 古参社員も先代の意向を気にする。 金融機関や取引先も、何かあると先代へ確認する。
こうした状態では、 肩書は社長でも、 自分の会社を経営している感覚を持ちにくくなります。
責任だけを引き継ぎ、権限が引き継がれていなければ、 二代目社長は苦しくなります。
2.何をしても先代と比較される
創業社長には、 自分で会社をつくってきた経験があります。
苦しい時期も、資金繰りも、取引先との交渉も、 自分で乗り越えてきました。
一方、二代目社長は、 すでにできあがった会社を引き継ぎます。
そのため、
「先代ならどうしたか」
「昔はもっと早かった」
「前の社長の方が分かっていた」
という比較が起こりやすくなります。
本人が新しいことを始めようとしても、 先代のやり方と違うだけで否定されることもあります。
それが続けば、 自分の判断に自信を持てなくなります。
3.年上の古参社員に遠慮してしまう
二代目社長より年上の社員が多い会社もあります。
中には、 二代目社長が子どもの頃から知っている社員もいます。
そうした社員に対して、
「このやり方を変えてください」
「この数字では利益が出ません」
「今後はこのルールで進めます」
とは、簡単には言えないことがあります。
頼りすぎたくない。
強く言いにくい。
不安を見せられない。
経営に迷っていると思われたくない。
こうして、 本音を話せる相手が少なくなっていきます。
4.判断を一人で抱えている
二代目社長の苦しさは、 単に話し相手がいないということではありません。
本当に重いのは、
「最後は、自分で決めなければならない」
という責任です。
設備投資をするのか。 採用するのか。 値上げするのか。 借入を増やすのか。 赤字部門を続けるのか。
どれも正解が一つではありません。
そして、 結果が悪ければ「社長の判断」と言われます。
一人で考える時間が長くなるほど、 「辞めた方が楽なのではないか」 という考えが出てくることがあります。
5.自分の経営ができている感覚がない
二代目社長が苦しくなる原因として、 意外に大きいのが、
「自分は何のために社長をしているのか分からない」
という状態です。
先代の仕事をそのまま引き継ぎ、 先代と同じ取引先に対応し、 先代と同じ社員を管理する。
気がつけば、 「先代の会社を守ること」だけが仕事になっている。
これでは、 自分の経営をしている感覚を持ちにくくなります。
先代に相談すると、結局「先代の会社」に戻ってしまう
二代目社長が一番相談しやすい相手は、 本来なら先代かもしれません。
しかし、ここに難しさがあります。
相談すると、
「俺ならこうする」
「そんなことも分からないのか」
「昔はもっと大変だった」
と返されることがあります。
先代に悪気はありません。
ただ、 先代の答えを聞き続けると、 二代目社長は自分で判断する機会を失っていきます。
相談したい。
でも、相談すると自分の経営ができなくなる。
この矛盾が、 二代目社長を苦しくします。
「辞めたい」と思ったら、まず原因を分ける
「もう辞めたい」と思ったとき、 すぐに
「自分は社長に向いていない」
と結論づけないことが大切です。
なぜなら、 辞めたい原因は一つではないからです。
権限が移っていない、口出しが多い。
年上社員に遠慮し、指示を出しにくい。
利益、資金繰り、借入の判断に自信がない。
すべての相談と決定が社長に集まっている。
原因を分ければ、 それぞれに対策を考えることができます。
孤独を減らすには、判断材料を増やす
経営者の不安は、 気持ちだけでなく、 情報不足から生まれることがあります。
例えば、
今月いくら利益が出ているのか。
来月の資金繰りは大丈夫か。
どの部門が利益を出しているのか。
どの顧客に依存しているのか。
どの仕事を減らすべきなのか。
こうしたことが見えるだけでも、 判断は変わります。
「何となく不安」を、「何を確認すれば判断できるか」に変える。
二代目社長が一人で強くなるのではなく、 判断できる材料を増やすことが重要です。
社員の声を聞くと、会社を一人で見なくてよくなる
二代目社長が、 自分一人で会社のすべてを見ようとすると、 さらに苦しくなります。
しかし、 社員は経営者が思っている以上に、 会社の問題に気づいています。
日々の仕事の中で、
どこに無駄があるのか。
どこで利益を失っているのか。
どの仕事が止まっているのか。
何を変えれば仕事が良くなるのか。
を経験しています。
三尾会計事務所では、 こうした現場の声を集めて経営課題の発見につなげる仕組みとして、 アンケートシステムCPS を活用しています。
先代との関係は「感情」より「役割」で整理する
先代社長が会社に残っている場合、 親子関係だけで整理しようとすると難しくなります。
大切なのは、 「誰が何を決めるのか」を明確にすることです。
原則として二代目が決める。
先代が一定期間支援する。
最初は同行し、その後二代目へ移す。
一定金額以上のみ相談する。
「何でも相談する」 「何でも先代が口を出す」 という状態より、 役割を決めた方が二代目社長は判断しやすくなります。
二代目社長に必要なのは「一人で強くなること」ではない
社長になると、
「自分がしっかりしなければ」
「弱いところを見せてはいけない」
と思いがちです。
しかし、 会社を安定させるために必要なのは、 一人ですべて抱えることではありません。
感覚ではなく、判断できる数字を持つ。
社員の声を経営に取り込む。
社外に判断を整理できる相手を持つ。
この3つがあるだけでも、 経営者の負担は大きく変わります。
まとめ|「辞めたい」は、社長に向いていない証拠ではない
二代目社長が「辞めたい」と感じる理由は、 本人の覚悟や能力だけではありません。
責任と権限が合っていない。
先代と役割が分かれていない。
社員との関係が難しい。
経営数字が見えていない。
判断を一人で抱えている。
こうした会社側の構造が重なれば、 誰でも苦しくなります。
「辞めたい」と思ったときこそ、
自分を責める前に、会社の仕組みを見る。
二代目社長が一人で強くなるのではなく、 一人で抱えなくてよい会社をつくることが大切です。


