従業員に事業継承をするメリット・デメリットとは?事業継承のやり方も解説
事業承継の後継者選びにおいて、3割ほどの割合で後継者として選ばれるのが社内の従業員です。
とはいえ、会社の経営を受け継ぐことは今後の会社の業績にも大きく関わるため、慎重に選びたいものですよね。
そこでこの記事では、そもそも事業承継とは何なのか? そして従業員に事業承継するメリット・デメリットについて詳しく解説していきます。事業承継で失敗しないため、そして選択肢をたくさん持つという意味でも、ぜひ最後まで読んでみてください。
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事業承継とは
事業承継とは、会社の経営を後継者に引き継ぐことを指します。
事業承継では、現社長の存命・死亡にかかわらず、会社を引き継ぐことが可能です。後継者には法的な制約がないため、親族による事業承継や従業員や第三者によるM&Aによる事業承継など、さまざまな方法があります。
また、事業承継は会社の経営権だけでなく、株式や資金、借金などの資産、および営業で培ったノウハウや顧客情報などを後継者に引き継ぐことを含みます。
そのため、後継者の選択は将来の会社経営に大きな影響を与えるものであり、信頼関係のある親族への事業承継やビジネスに精通した方によるM&Aと比較して、従業員を後継者に選ぶ場合には特に慎重に選定する必要があります。
従業員に事業承継するメリット
従業員に事業承継するメリットは下記の3つです。
従業員に事業承継するメリット
- 従業員の数が多いほど後継者を選別できる
- 会社や仕事をよく知っている人に引き継げる
- 社風・企業文化を引き継げる
それぞれのメリットについてくわしく解説していきます。
従業員の数が多いほど後継者を選別できる
会社の経営を引き継ぐ後継者を選ぶ際には、適性や実績、信頼性などを考慮して選別する必要があります。そのため、後継者の候補を広く募集することが重要です。特に従業員の中から後継者を選ぶ場合、より多くの選択肢があります。
会社の後継者には親族を選ぶことも可能ですが、親族の場合は人選が制限されることや、必ずしも事業承継を引き受けてくれるとは限らず、適性があるとも限りません。
一方、従業員であれば、経営権を引き受ける意欲も高い可能性がありますし、多くの選択肢から適正な人材を選ぶことができます。
会社や仕事をよく知っている人に引き継げる
従業員は通常、業務内容や会社の内情についてよく理解しています。そのため、従業員を後継者として選ぶことで、事業承継後も業務を円滑に進めることができます。
特に、長く勤続している役員や重要なポジションにいる従業員を後継者とすることは、企業の理念や現場での業務を継承しやすい可能性が高いです。このような従業員を後継者に選ぶことは、事業承継を安心して進めることができると言えます。
社風・企業文化を引き継げる
現在働いている従業員の中には社風や企業文化が自分に合っていると思っている方も多いことでしょう。そのような状況で社長が変わり、さらには社風や企業文化まで大きく変化してしまうと従業員も困惑してしまうかもしれません。
そこで、社風や企業文化をよく理解している従業員に事業承継することで、今まで通りの社風と企業文化を維持しながら会社を経営していくことができます。
従業員に事業承継するデメリット
従業員に事業承継するデメリットは下記の2つです。
従業員に事業承継するデメリット
- 会社が大きく発展しない
- 資金が足りない
それぞれのデメリットについてくわしく解説していきます。
会社が大きく発展しない
社内の従業員が会社の経営を受け継ぐ場合、今まで通りの社風や企業文化のもと、先代の経営方針を忠実に受け継ぐ傾向があります。しかし、このようなケースでは会社の大きな発展が制限される可能性もあるでしょう。
会社を事業承継した後、さらに会社の大きな発展を望む場合は、大胆な改革ができるような人材を選定するか、経営に優れた人材をM&Aによって獲得するなどの対策が必要です。これらの措置によって、会社の成長と発展を促進することができます。
資金が足りない
従業員が会社の経営を引き継ぐ場合、自社株を買い取る必要がありますが、従業員には資金力が不足している可能性があります。
従業員が自社株を買い取るためには、いくつかの方法で資金不足を解消する必要があります。例えば、銀行やファンドからの融資を受ける方法や、事業承継税制の利用、自社株の評価額を下げる方法などがあります。
しかしながら、これらの方法は容易ではなく、専門的な知識が必要です。社内で解決することは難しいため、専門家に相談する必要があります。
また、専門家に相談する際には費用がかかることも考慮しなければなりません。いずれにしても後継者となる従業員の資金力は必要になるのです。
従業員に事業承継する仕方
従業員に事業承継する方法は下記の5つのステップで完結します。
- ステップ1. 候補者を選定する
- 適性や能力、経営理念への共感などを考慮し、会社の後継者となる候補者を選びます。
- ステップ2. 計画書を作成する
- 事業承継計画書を作成し、後継者の役割や責任、経営戦略などを明確化します。これにより計画的な移行が可能となります。
- ステップ3. 候補者を育成する
- 選ばれた後継者を育成し、必要な経営スキルや知識を身につけさせます。研修や指導を通じて後継者の成長を支援します。
- ステップ4. 株式を譲渡する
- 先代経営者が所有する株式を後継者に譲渡します。株式譲渡契約を締結し、所有権の移行を実施します。
- ステップ5. 業務を引き継ぐ
- 後継者が経営の実権を引き継ぎ、会社の業務を継続して運営します。顧客関係や取引先との連携を確保し、円滑な移行を実現します。
それぞれのステップについてくわしく解説していきます。
候補者を選定する
事業承継をすることが決まったら、まずは会社の現状を把握してから後継者の候補になる従業員を選定する必要があります。
初めから後継者候補の従業員を2、3人に絞るのではなく、数多くの従業員を候補にしてそれぞれの適性を判断したほうが後継者選びに成功しやすいです。
計画書を作成する
事業承継は会社を後継者に受け継ぐだけではなく、会社が保有している資産や財産についても可視化する必要があるため、専門家のアドバイスのもと「事業承継計画書」を作成する必要があります。
事業承継計画書を作成することで、事業承継の際に認識の相違を生むことなくスムーズに行えることや、事業承継税制の特例措置の適用にも必要になるため、必ず作成しましょう。
候補者を育成する
事業承継の後継者となった従業員がすぐに会社の経営サイドに就くことは非常に難しいため、長期的なスパンで後継者を育成する必要があります。
この時点でも候補者を一人に絞るのではなく、育成しながら適性を判断していくといいでしょう。
株式を譲渡する
事業承継をする場合、基本的には経営者が保有していた株式を後継者に有償で譲渡することで会社を引き継ぐ流れになりますが、後継者の資金不足の場合は株式を贈与することもできます。
いずれにしても、事業承継をする場合は保有している株式は後継者に渡すことになるのを覚えておきましょう。
業務を引き継ぐ
ここまでのステップが完了し、最後に株式総会にて正式に事業承継が承認されたら、後継者へ業務を引き継ぎます。
基本的に事業承継のタイミングでは後継者に業務内容の引き継ぎは完了していますが、業務に対する最終確認や商業登記・不動産登記などが必要になるかどうかも合わせて確認しましょう。
不安ならプロに相談するのも◎
従業員へ事業承継する場合、株式の譲渡や事業承継計画書の作成などで専門的な知識が必要になるため、少しでも不安がある方はプロに相談するといいでしょう。
プロに相談することで、トラブルなく事業承継できるだけではなく、税金が発生する場合についても有利に進めることができます。
本記事を執筆している三尾会計事務所では、経営面、税制面など様々な視点で貴社の状況に合わせた的確な方法をアドバイスしています。初回のご相談は無料なので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
まとめ
この記事では、そもそも事業承継とは何なのか?そして社内従業員に事業承継するメリット・デメリットについて詳しく解説していきました。
従業員に事業承継することで多くのメリットがある一方でデメリットも存在しますので、今後の会社をどのようにしていきたいのかを明確にしてから総合的に事業承継の後継者を選ぶようにしましょう。
ぜひこの記事を参考にして従業員への事業承継を検討してみてください。