M&Aで事業を売る前に考えるべきこと――「会社をどう残すか」から経営再建を考えた事例

小売事業と不動産賃貸事業を営む会社の経営者から、第三者より小売事業の買収提案を受けたため、売却すべきか判断したいとのご相談をいただきました。
会社は一定の売上規模がある一方、多額の金融機関借入を抱え、営業利益はわずか。資金繰りにも余裕がありませんでした。
経営者としては、事業売却によって借入金を圧縮し、その後は新しい事業へ挑戦したいという思いを持っていました。
この事例のポイント
小売事業について第三者から買収提案がありました。
現在の利益水準では、借入金の返済が厳しい状態でした。
小売事業は一定の粗利益を確保していました。
売却後にどのような会社を残すのかが整理されていませんでした。
ご相談のきっかけ
相談企業は、小売事業と不動産賃貸事業を長年営んでいました。
売上規模は大きいものの、本社管理費や借入負担が重く、会社全体として十分な利益を残せていませんでした。
そのような状況で、小売事業について第三者から買収の提案がありました。
経営者が知りたかったのは、主に次の3点でした。
今のタイミングで事業を手放すことが正しいのか。
提示された条件が事業の実態に見合っているのか。
会社と経営者自身が、その後どのような道を進むのか。
表面的な相談は「事業を売るべきか」
相談の入口はM&Aでした。
しかし、私たちは売却条件を検討する前に、会社の実態を整理する必要があると考えました。
事業売却によって借入金を減らせたとしても、その後の会社に利益を生む力が残らなければ、根本的な経営改善にはなりません。
本当の課題は「会社全体の収益構造が見えていないこと」
決算内容や事業構造を確認していくと、小売事業そのものには一定の粗利益がありました。
一方で、会社全体では本社管理費が大きく、店舗ごとの収益性にも差がありました。
利益を生む店舗と、採算性の低い店舗が混在していました。
事業そのものの利益を、本社間接費が圧迫していました。
現在の利益水準では、返済を継続することが困難でした。
不動産、在庫、実質純資産を改めて確認する必要がありました。
視点を「M&A」から「会社の再構築」へ
そこで、事業売却だけを経営改善策と考えるのではなく、売却する場合もしない場合も、会社全体を再構築する必要があるとお伝えしました。
まず、店舗別の損益、本社管理費、借入金、資産内容、資金繰りを整理し、会社の本当の収益力を見えるようにすることが必要でした。
そのうえで、
収益性が高く、今後も競争力を持つ店舗を明確にする。
利益を生まない店舗や業務について再編を検討する。
間接費の内容を確認し、会社規模に合った管理体制へ変える。
不動産・在庫・その他資産の価値を確認し、活用方法を検討する。
「会社や事業を売るべきか迷っている」「提示された条件だけでは判断できない」 という段階でもご相談いただけます。
今の状況を相談する →実際に行った支援
- 財務内容・収益構造の分析
- 実質純資産の検証
- 店舗別採算の分析
- 本社間接費の分析
- 金融機関借入の内容整理
- 資金繰りの確認と改善方向の整理
- M&A提案を判断するための論点整理
- 金融機関や買い手へ説明する資料作成の助言
- 事業再構築の方向性整理
結果――「売る・売らない」の二択ではなくなった
相談者には、事業売却だけが会社再建の方法ではないことをご理解いただきました。
店舗別採算と本社コストを分けて確認できるようになりました。
価格だけではなく、売却後の会社の姿から判断できるようになりました。
M&A、店舗再編、コスト削減、資産整理を含めて検討できる状態になりました。
事業売却は「会社を手放すこと」ではない
事業売却は、経営者にとって非常に大きな意思決定です。
だからこそ、買い手から提示された価格だけを見て決めるものではありません。
どの事業を残すのか。
借入金をどうするのか。
残った会社で何を始めるのか。
経営者自身がその後、何をしたいのか。
その判断に必要な情報を整理することが、M&Aや企業再生における重要な第一歩です。


