経営危機の中で、「債務整理」から「事業の再スタート」へ視点を転換した事例
この事例から学べること
企業再生は、借金を整理することだけが目的ではありません。経営者が再び前を向き、新しい事業へ進むための時間と環境をつくることが、本当の再生につながります。
ご相談内容
長年、学校給食向けを中心に食品卸売業を営んできた企業から、売上の急減と多額の借入金により、今後の事業継続が難しくなっているというご相談をいただきました。
金融機関からの借入金は複数行にわたり、総額約8,000万円。
新たな資金調達も難しくなっており、相談者は、
「事業再生ADRなどの再生手続を利用すべきなのか」
という点について判断したいと考えていました。
ご相談時の状況
相談企業は、生鮮食品の販売を主力事業としていました。
しかし、コロナ禍の影響により学校給食向け需要が大きく落ち込み、その後も取引環境の変化が重なったことで売上が急減しました。
さらに、取引先に起因する問題への対応なども重なり、資金繰りは急速に悪化していました。
複数の金融機関から借入れがあり、返済負担が重くなる一方で、新たな借入れによって資金繰りを補うことも難しい状況でした。
相談者は、制度を利用して債務整理を進めるべきか、それとも別の方法を考えるべきか、方向性を決められずにいました。
本当の課題
当初のご相談は、
「どの再生制度を利用すればよいか」
というものでした。
しかし、本当に重要なのは制度を選ぶことではありませんでした。
本当の課題は、
経営者が再び事業を立て直すための時間と余力を確保し、これから何を事業として築いていくのかを決めること
でした。
借入金の返済だけに意識を集中すると、経営者の時間も資金も過去の問題処理に使われてしまいます。
もちろん、金融機関との返済条件や債務の整理は重要です。
しかし、それだけでは会社の未来はつくれません。
企業再生では、「過去をどう処理するか」と同時に、「これから何をつくるか」を考える必要があります。
意思決定のために整理したこと
そこで、
「借入金をどう整理するか」
という発想から、
「これから何を事業として再構築するか」
という視点へ転換することをご提案しました。
① まず、資金繰りと返済負担を整理する
最初に、現在の財務状況、毎月の資金繰り、金融機関ごとの借入残高や返済条件を整理しました。
会社がどの程度の返済であれば継続できるのかを把握し、無理のない水準を確認することが重要です。
返済のために事業そのものが立ち行かなくなっては、再生にはつながりません。
② 金融機関との協議によって時間を確保する
現状を踏まえ、まず金融機関や保証協会と返済条件について協議し、当面の資金負担を軽減する方向を検討するよう助言しました。
重要なのは、返済を止めることそのものではなく、
経営者が次の事業を考え、実行するための時間を確保すること
です。
そのため、実際の収益力や資金繰りに合わない返済計画ではなく、継続可能な計画を金融機関と共有する必要があります。
③ 制度を使うこと自体を目的にしない
事業再生ADRをはじめとする再生手続には、それぞれ特徴があります。
一方で、手続には一定の時間や費用が必要となるため、会社の状況によっては、まず金融機関との個別協議を進める方が現実的な場合もあります。
そのため、
「利用できる制度は何か」ではなく、「この会社にとって何が最も現実的か」
という視点で検討することが重要だと説明しました。
④ 過去の処理より「次の事業」に時間を使う
経営者ご夫妻の年齢やこれまでの経験を踏まえると、過去の問題処理だけに長期間を費やすのではなく、その経験や取引関係を生かし、新しい事業を立ち上げることにも時間を使うべきだと考えました。
今までの事業で培った経験、人脈、商品知識は、会社に残された大切な経営資源です。
それらを生かして、
「これから何を売るのか」
「誰に提供するのか」
「どのような形なら利益を出せるのか」
を改めて考えることをご提案しました。
⑤ 経営者自身の意思を確認する
企業再生では、制度や数字だけでは方向性を決められません。
最終的に重要なのは、経営者自身が、
「もう一度事業を立て直したい」
という意思を持っているかどうかです。
過去の経験は次の経営に生かすことができます。
一方、未来を正確に予測することはできません。
だからこそ、経営者が自ら方向を決め、その方向へ進むための環境を整えることが企業再生では重要だと考えました。
実施した専門的支援
- 財務状況と資金繰りの整理
- 金融機関別の借入状況・返済負担の確認
- 事業再生手続の特徴と検討上の留意点を整理
- 金融機関・保証協会との協議方針について助言
- 継続可能な返済計画の考え方を整理
- 今後の事業再構築に向けた方向性の整理
- 経営者の経験や経営資源を生かした再スタートについて助言
- 今後の経営に関する意思決定を支援
結果
相談者は、特定の再生制度を利用することだけにとらわれるのではなく、まず金融機関との協議を進めながら、今後の事業再構築を最優先に考える必要があることを理解されました。
返済のためだけに経営を続けるのではなく、
自らの経験やこれまで築いてきた経営資源を生かして、新たな事業へ挑戦する
という選択肢も含めて考える方向性が整理されました。
企業再生を「過去の負債を処理する作業」と考えるのではなく、
「経営者がもう一度未来へ歩き出すための準備」
として捉え直すことができました。
三尾会計事務所からのメッセージ
経営危機に直面すると、多くの経営者は、
「借金をどうすればよいか」
という問題に意識が集中します。
もちろん、金融機関への返済や資金繰りを整理することは重要です。
しかし、それだけでは企業再生とは言えません。
企業再生とは、過去を整理することではなく、経営者がもう一度未来へ歩き出せる状態をつくること。
私たちはそのように考えています。
過去の経験は、次の経営に使うことができます。
未来を正確に予測することはできません。
だからこそ、経営者自身が、
「これからどんな事業をつくりたいのか」
という意思を持ち、その方向へ進める環境を整えることが重要です。
三尾会計事務所では、再生制度の選択だけではなく、金融機関との対話、資金繰りの見直し、事業計画、そして新しい事業への再スタートまで含めてご支援しています。
このようなお悩みはありませんか?
- 借入金の返済が重く、資金繰りが厳しくなっている
- 複数の金融機関から借入れがあり、返済の見通しが立たない
- 売上が減少し、このまま事業を続けるべきか迷っている
- リスケジュールや返済条件変更を金融機関へ相談したい
- 事業再生の制度を利用すべきか判断できない
- 過去の借入れへの対応だけでなく、次の事業を考えたい
- 経営者としてもう一度会社を立て直したい
- 会社を残す・事業を変える・再スタートする選択肢を整理したい
一つでも当てはまる場合は、制度を決める前に、
「これからどのような事業をつくりたいのか」
というところから一緒に整理してみませんか。
会社を立て直すための選択肢を、一緒に整理しませんか?
資金繰りが厳しくなると、目の前の返済だけで精一杯になりがちです。
しかし、本当に必要なのは、経営者がもう一度未来へ進める道筋をつくることです。
三尾会計事務所では、金融機関対応・資金繰り・事業計画・再生方法を整理し、
会社や事業の再スタートまで含めてご支援します。
対面・オンライン(Zoom)・メール・お電話でご相談いただけます。


