先代社長が急逝。自社株の相続税と会社運営の不安を同時に解決した事例

この事例から学べること
先代社長が急逝し、準備のないまま後継者が会社を引き継ぐことになった場合、問題は「社長になること」だけではありません。
自社株の相続、相続税の納税資金、会社の管理体制、社員との関係など、複数の問題が同時に表面化することがあります。
相談のきっかけ
事業承継をテーマとしたセミナーに参加された方から、個別相談を受けたことがきっかけでした。
相談者は、それまで公務員として勤務していましたが、人材派遣サービス会社を経営していた先代社長が急逝したため、急遽会社を引き継ぎ、代表取締役に就任していました。
相談者の状況
当初は事業承継や会社経営についての相談として何度かお会いしていました。
ところが、その後の面談で、実は先代社長の相続税申告が必要であることが分かりました。
さらに確認すると、相続税の申告期限まで残されていた期間は、わずか2か月程度でした。
相続財産を調べたところ、財産の大半を自社株が占めていました。
しかし、相続財産として残されていた預貯金などの金融資産だけでは、その相続税を支払うことが困難な状況でした。
表面的な相談
当初の相談は、突然会社を引き継いだ後継者として、これからどのように会社を運営していけばよいのか、という事業承継・経営に関するものでした。
しかし、面談を重ねる中で、より緊急性の高い相続税問題が明らかになりました。
本当の問題
この事例では、大きく2つの問題が同時に存在していました。
一つは、相続税の申告期限が迫る中で、自社株を相続したことによる多額の相続税をどのように処理するかという問題です。
もう一つは、創業者であった先代社長が強いリーダーシップで会社を牽引してきたため、会社内部の管理体制や意思決定の仕組みが十分に整備されていなかったことでした。
つまり、税金の問題を解決するだけでは、事業承継は完了しない状況だったのです。
提案・判断
まず最優先としたのは、申告期限が迫っていた相続税への対応でした。
自社株の評価額が高く、納税資金を確保することが難しかったため、事業承継税制の特例措置が利用できないかを急いで検討しました。
限られた期間の中で必要な手続きを確認し、関係書類を整え、特例措置の申請を進めました。
実際に行ったこと
事業承継税制の特例措置を利用したことで、自社株に係る相続税について納税猶予を受けることができました。
その後は、後継社長が抱えていた会社運営への不安に対応しました。
そこで三尾会計事務所では、無記名による社員アンケートを実施しました。
社員が会社をどのように見ているのか、どのような問題や不満を抱えているのかを把握し、その結果をもとに会社運営についてのアドバイスを行いました。
結果
この支援によって、後継社長が抱えていた二つの大きな問題に対応することができました。
一つは、自社株相続によって生じる相続税問題です。
もう一つは、会社運営に対する不安です。
社員アンケートを通じて会社内部の状況を把握し、経営上の課題を整理したことで、後継社長自身が会社運営についての判断を行いやすくなりました。
その後
支援開始から約1年後、後継社長は、自分たちで会社を運営していけるという判断ができるまでになりました。
そのため、三尾会計事務所との継続的な支援契約は終了しました。
支援を長期間続けること自体が目的ではありません。
後継者自身が会社の状況を把握し、自ら判断し、自ら会社を運営できる状態になることが、事業承継支援の一つのゴールだと考えています。
事業承継は、株式を渡せば終わるものではありません。
後継者、株主、自社株、相続、借入金、会社の管理体制などを整理し、「誰に、何を、どのように引き継ぐか」を考えることが重要です。
まだ承継方法が決まっていなくても構いません。


