事業承継の相談から、税務調査対応と毎月の年間利益予測、早期申告まで支援した事例

税務調査後の会計改善と事業承継について打ち合わせる建設会社の経営者と後継者

事業承継・税務調査・法人税申告・管理会計

ご子息への事業承継を考えていた建設会社に税務調査が入り、過年度の修正申告が必要になりました。三尾会計事務所では、修正申告だけで終わらせず、毎月の会計処理と利益予測の仕組みを再構築。決算の約6か月前から課税所得を予測し、決算月の翌月中に法人税・消費税の申告を行える体制へ改善しました。

この事例から分かること

  • 事業承継では、株式や社長交代だけでなく、会計・税務の仕組みも引き継ぐ必要がある
  • 税務調査後の修正申告は、過去の処理だけでなく再発防止まで考えることが重要
  • 受注額・完成予測・利益率を毎月更新することで、決算前から課税所得を予測できる
  • 利益構造の見える化は、後継者が経営を引き継ぐための共通言語になる

1.相談のきっかけ

事業承継をテーマとしたセミナー後の個別相談会で、中堅建設会社の経営者から、「将来は息子に会社を引き継がせたいが、何を、どのような順番で進めればよいか分からない」というご相談をいただきました。

個別相談後、事業承継に関するコンサルティング契約を締結し、経営者とご子息を交えた定期的なミーティングを開始しました。会社の状況や将来の承継方針を共有しながら、次期経営者へ何を引き継ぐべきかを整理していくことになりました。

2.相談者の状況

会社には長年依頼している税務顧問がいましたが、会計処理は主に決算と申告書作成を目的としており、経営者が毎月の利益や年度末の課税所得を把握できる仕組みにはなっていませんでした。

法人税や消費税の納税見込額が分かるのは、申告書の作成期限が近づいてからでした。そのため、決算前に利益や納税額を予測し、必要な対策を検討することが難しい状態でした。

3.表面的な相談

定期ミーティングを始めて数か月後、会社に税務調査が入り、過年度の会計処理について修正申告が必要となりました。

当時の顧問税理士では税務調査後の対応が難しいということで、三尾会計事務所が事実関係と過年度資料を確認し、修正申告書の作成から関与することになりました。

4.本当の問題

本当の問題は、修正申告が必要になったことだけではありませんでした。従来と同じ会計処理を続けていれば、将来の税務調査でも同様の指摘を受ける可能性がありました。

また、建設業では、受注してから工事が完成するまでに時間がかかります。現時点の売上や会計帳簿だけを見ても、年度末にどの工事が完成し、どれだけの利益が計上されるのかを正確に予測できません。

事業承継という観点からも、会社の利益がどのように生まれ、税金がどのように計算されるのかが経営者の経験の中にとどまっている状態では、ご子息へ経営判断の仕組みを引き継ぐことができませんでした。

5.三尾会計事務所の提案・判断

三尾会計事務所では、修正申告を作成して税務調査を終えるだけでなく、毎月の会計処理と利益予測の方法を見直す必要があると判断しました。

そこで、毎月のミーティングで、受注額、工事ごとの完成予定、予想される完工利益、今後発生する固定費を確認し、年度末までの利益と課税所得を予測する仕組みを提案しました。

新規受注や工事の進捗、完成時期、原価見込みに変化があれば、その都度年間予測を洗い替えます。決算書が完成してから税金を計算するのではなく、経営の変化に応じて税額見込みも更新する方法です。

6.実際に行ったこと

まず、税務調査の対象となった過年度の資料と会計処理を確認し、修正が必要な範囲を整理して、法人税・消費税等の修正申告書を作成しました。

その後、会社と三尾会計事務所が共通の資料を使用し、毎月オンラインでミーティングを実施する体制を整えました。ミーティングでは、主に次の項目を確認しています。

  • 新規受注額と今後の受注見込み
  • 工事ごとの完成予定時期
  • 完成工事から見込まれる利益
  • 人件費など年度末までの固定費予測
  • 年度末の利益、課税所得、法人税・消費税の見込額
  • 決算までに実施できる対策と資金準備

7.結果

受注額、完工利益、固定費の予測を毎月更新することで、決算のおおむね6か月前には年度末の課税所得を見通せるようになりました。

その結果、決算直前になってから納税額を知るのではなく、事前に法人税・消費税の見込額を確認し、納税資金の準備や決算対策について早い段階から話し合えるようになりました。

会計処理と決算準備も早期化され、現在では決算月の翌月中に法人税・消費税の申告書を提出できる体制となっています。

また、年間利益を早期に予測できるようになったことで、単に売上高を追い求めるのではなく、工事ごとの利益率と年間の収益性を重視する経営へ転換しました。

8.その後

会計処理と税金計算の方法が明確になったことで、後継者であるご子息にも、会社の利益構造、工事別の採算、納税までの流れを具体的に伝えられるようになりました。

税務調査をきっかけとした会計・申告体制の改善が、結果として次期社長が経営を引き継ぐための準備にもつながっています。

税務調査を将来にわたり完全に避けることはできません。しかし、会計処理の基準を明確にし、毎月の確認と資料整備を継続することで、同様の指摘を受けるリスクを抑え、次回の調査にも説明できる体制を整えることができます。

難しい課題の解決から、その後の税務申告まで

税務調査、修正申告、法人税・消費税申告、事業承継について、現在の状況を一緒に整理します。