試算表は「過去」の数字|年度末の利益・納税額を先に読む経営へ

試算表を見て、「今月は黒字だった」「今月は赤字だった」と一喜一憂していませんか。

試算表で分かるのは、基本的にはこれまでの結果です。
経営者が本当に知りたいのは、 「このままいけば年度末にいくら利益が残り、どの程度の納税資金が必要になるのか」 ではないでしょうか。

決算期が近づいてから税額を知らされ、 「こんなに税金が出るとは思わなかった」 と慌てて資金を準備する。

あるいは、毎月の試算表を見るたびに、 前月は大幅黒字、今月は赤字という数字が並び、 会社が本当は儲かっているのかどうか分からなくなる。

こうした状態は、珍しいことではありません。

問題は「会計処理が遅いこと」だけではありません。

年度末の売上・利益・資金・税負担を、 年度の途中から予測する仕組みがないことが大きな問題です。

会社経営では、決算が終わってから結果を知るのでは遅いことがあります。

今期の着地を早く予測できれば、 設備投資、人員採用、賞与、資金調達、価格改定などの判断を、 年度末を待たずに進めることができます。

試算表は「答え」ではなく、経営判断の材料です

毎月試算表を作ること自体には、大きな意味があります。

しかし、試算表を作っただけで経営管理ができているわけではありません。

試算表には、それまでに計上された売上や費用が表示されます。 一方で、これから発生する受注、賞与、減価償却、設備投資、 決算までに必要となる支出などは、まだ十分に反映されていません。

そのため、 「今までどうだったか」と 「年度末にどうなりそうか」 は分けて考える必要があります。

試算表は過去を確認するもの。
経営者が必要なのは、未来の着地を読む数字です。

この二つを組み合わせて初めて、数字が経営判断に使えるようになります。

なぜ、毎月の利益が大きくぶれるのか

月次試算表の数字が安定しない会社では、 必ずしも本当に事業の収益力が毎月大きく変化しているとは限りません。

会計処理のタイミングによって数字が大きく動いている場合があります。

賞与・減価償却など

年間では発生することが分かっていても、特定月にまとめて計上すると利益が大きく変動します。

売上計上のずれ

受注、納品、検収、売上計上のタイミングが違うと、月ごとの売上が大きくぶれます。

在庫

棚卸金額が月次で把握されていなければ、本当の粗利益が見えにくくなります。

売掛金・買掛金

計上漏れや締め処理の遅れがあると、月次利益そのものが正しく見えません。

こうした項目を整理せずに試算表だけを見ると、 経営者は実態ではなく 「会計処理のタイミング」に振り回されることになります。

まず、年間の固定費を把握する

年度末の利益を予測するうえで、 最初に整理したいのが固定費です。

給与、家賃、保険料、減価償却費、システム利用料など、 売上が多少変動しても毎年ある程度発生する費用があります。

これらは年度末まで待たなくても、 年度の初めに相当程度予測できます。

会社は、まず固定費を回収しなければ利益を出せません。

「今年いくら売りたいか」だけではなく、 「今年いくらの固定費を負担し、そのうえでいくら利益を残したいか」 から考える必要があります。

売上より先に「限界利益」を見る

売上が増えれば、そのまま会社の利益が増えるわけではありません。

例えば製造業であれば、売上を上げるために材料費や外注加工費が必要になります。 その他の業種でも、仕入や販売手数料など、売上に応じて増える費用があります。

限界利益とは

売上から、材料費・外注費・仕入など、売上に応じて増える変動費を差し引いた残りです。 この限界利益で、給与・家賃・減価償却費などの固定費を負担し、 さらに残った部分が営業利益につながります。

つまり、会社経営では「いくら売ったか」だけではなく、 その売上から、どれだけ限界利益を残せたかを見ることが重要です。

会社が稼がなければならないのは、「売上」だけではありません。

年間の固定費を負担し、 さらに目標とする営業利益を残せるだけの 限界利益を確保する必要があります。

例えば、年間固定費が1億円あり、 さらに2,000万円の営業利益を残したい会社なら、 必要となる限界利益の目安は1億2,000万円です。

そこから自社の限界利益率を使えば、 必要な売上高を逆算できます。

この考え方を持っていると、 「今年は何となく10億円売りたい」という目標ではなく、 利益から逆算した売上目標を作ることができます。

売上はあるのに、なぜ利益が残らないのか

会社全体だけでなく、顧客別・商品別に利益を見ることで、 どこで利益を稼ぎ、どこで利益を失っているかが分かります。

顧客別・商品別に「どこで利益を稼いでいるのか」を見える化する

年度途中で「着地予測」をつくる

固定費と必要な限界利益が分かったら、 次は今期の着地を予測します。

すでに確定している売上だけを見るのではありません。

受注済みで今期中に納品予定の仕事、 契約済みの案件、 継続的に発生する売上などを加えて、 年度末までの売上予測を作ります。

そして、その売上から得られる限界利益と年間固定費を比較します。

ここで重要なのは、「足りない」という事実を早く知ることです。

年度の半ばで目標利益に届かないことが分かれば、 残り半年で営業活動、価格、固定費、設備投資などを見直せます。 決算直前に分かっても、できることは限られます。

納税額も「結果を待つ」のではなく早めに見通す

年度末の利益や課税取引の状況を早い段階から予測できれば、 法人税や消費税などについても、 一定の前提を置いた納税見込みを早めに準備できます。

もちろん、最終的な税額は決算整理や税務上の調整を行った後に確定します。

しかし、経営上重要なのは、 申告期限直前まで税額をまったく把握できない状態から抜け出すことです。

税額を早く知る目的は「節税」だけではありません。

いつ、どの程度の資金が必要になるかを早めに把握し、 納税後も会社の資金繰りに支障が出ない状態をつくることが重要です。

決算が終わってから利益を知る経営から、年度途中で着地を読める経営へ。

売上、限界利益、固定費、資金繰りを整理し、 年度末の利益と納税資金を早めに予測する仕組みづくりをご相談いただけます。

今の経営数字について相談する

着地が見えると、経営判断が早くなる

年度末の利益と資金の見通しが立つと、 毎月の経営会議で話す内容も変わります。

「先月はいくら儲かったか」という報告だけではなく、

設備投資

今期に実行しても資金繰りに問題はないか。

人材

採用、昇給、賞与をどこまで実施できるか。

営業

目標との差を埋めるため、どれだけ受注が必要か。

資金

納税、返済、投資を含めて資金は足りるか。

といった、 これからの行動を決めるための数字を話せるようになります。

事例1 年度の半ばで利益を予測できるようになったシステム開発会社

以前は、決算を締めて初めて年間利益が分かっていました。

この会社では自社で会計処理を行っていましたが、 受注、作業着手、納品、売上計上、回収のタイミングが異なり、 毎月の試算表だけでは年間の着地を把握できませんでした。

そこで、受注済みの仕事を整理し、 今期中に完了する案件と次年度へ繰り越す案件を分けました。

今期分について予想売上と限界利益を積み上げ、 前期実績を参考に年間固定費も予測しました。

結果

年度の6か月目程度で年間営業利益の見通しを持てるようになり、 決算直前に慌てて対策を考える必要が大幅に減りました。

売上、変動費、固定費の見通しが早く固まるため、 納税見込みについても従来より早い段階で検討できるようになりました。

事例2 企業再生では「未来の数字」が不可欠だった

企業再生計画を実行する会社では、過去の試算表だけでは足りませんでした。

金融機関から借入金の返済条件を変更してもらった会社では、 定期的に月次試算表や資金繰りを説明する必要がありました。

しかし、過去の実績だけを見ても、 将来、元金や利息を返済できるかどうかは判断できません。

そこで、毎月の新規案件を積み上げ、 今後得られる限界利益と固定費を継続的に確認しました。

結果

年間の利益とキャッシュフローの見通しを早い段階から把握し、 金融機関にも今後の資金状況を説明しながら、 資金ショートを避ける経営管理ができるようになりました。

経営数字は、社員の行動にもつながらなければ意味がない

年度末の着地を予測しても、 経営者だけが数字を見て終わってしまえば、 会社全体の行動はなかなか変わりません。

例えば、 「今期はあと2,000万円の限界利益が必要だ」 ということが分かったとします。

その数字を営業、製造、購買など、 それぞれの部門の行動に落とし込む必要があります。

また、数字だけでは 「なぜ利益が予定より落ちているのか」 まで分からないこともあります。

値引き受注、材料不足、不良、手戻り、外注費の増加など、 実際の原因を知っているのは現場社員である場合があります。

数字には結果があり、社員の声には原因を発見する手掛かりがあります

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試算表で一喜一憂する経営から卒業する

毎月の試算表は必要です。

しかし、試算表を見ること自体が経営の目的ではありません。

年度初めに固定費を見通し、 必要な限界利益と売上を考え、 受注実績から年度末の着地を予測する。

そして、目標との差があれば、 年度の途中で行動を変える。

「決算をしてみなければ分からない」から、
「年度途中で着地が見えている」会社へ。

数字は結果を説明するためだけではなく、
これから何をするかを決めるために使うものです。

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