事業承継税制か、持株会社か。制度を選ぶ前に承継の準備状況を整理した事例

この事例から学べること

事業承継は、株式を贈与したり相続したりする時に始まるものではありません。

誰が、いつ、どのような経緯で株式を取得したのかを日頃から正確に管理しておくことが、将来の事業承継を円滑に進めるための重要な土台になります。

ご相談内容

同族株主と持株会社で株式を保有している会社から、次のようなご相談をいただきました。

「今後、相続や贈与などで株式が移動する可能性があります。現在はExcelで管理していますが、このままでよいのでしょうか。」

相談企業では、同族株主6名と、その同族株主が設立した持株会社が、発行済株式の約80%を保有していました。

現時点では大きな問題は発生していませんでしたが、今後は相続、贈与、売買などによって株式が動く可能性があります。

そのため、将来の事業承継を見据え、株主情報や株式の異動履歴をどのように管理していけばよいかを整理したい、というご相談でした。

本当の課題

ご相談の表面的なテーマは、「株式台帳をどう整備するか」でした。

しかし、私たちが重要だと考えたのは、単にExcelの表を作り直すことではありません。

本当の課題は、将来の事業承継に耐えられる「株主ガバナンス」を整えることでした。

株式は、会社の所有権そのものです。

ところが、長年にわたって株式の異動が繰り返されると、次第に、

  • 誰が現在の株主なのか
  • いつ株式を取得したのか
  • 相続・贈与・売買のどれによって取得したのか
  • 必要な会社法上の手続きが行われているのか
  • その手続きを裏付ける書類が残っているのか

といったことが分かりにくくなっていきます。

将来、事業承継や相続が発生した時になって初めて整理しようとすると、過去の資料が見つからず、株主関係を確認するだけでも多くの時間が必要になることがあります。

そこで今回は、「株式が動いてから整理する会社」ではなく、「株式が動いても困らない会社」にしておくことを目標にしました。

意思決定のために整理したこと

まず、現在の株式管理について、単なる株数の一覧ではなく、株式の履歴まで確認できる形に整理する必要があると考えました。

そこで、株式管理の基本項目として、例えば次のような情報を一元的に把握できる形をご提案しました。

  • 株主氏名・名称
  • 保有株式数
  • 取得日
  • 取得原因
  • 異動前後の株式数
  • 株式異動の相手方
  • 関連する決議・契約書等の保存状況

さらに重要なのは、株式台帳だけを更新するのではなく、株式移動の根拠となる書類と一体で管理することです。

例えば、相続であれば遺産分割協議書など、贈与や売買であれば契約書や必要に応じた譲渡承認関係書類など、株式が移動した理由を後から確認できる資料を残しておくことが大切です。

また、譲渡制限株式の場合には、会社の機関設計や定款の内容に応じて、株式譲渡承認の手続きが必要になる場合があります。

そのため、株式台帳の整備を単なる事務作業として考えるのではなく、

「誰が会社を所有しているのかを、会社自身が説明できる状態をつくる」

という視点で整理しました。

実施した専門的支援

  • 現在の株式管理方法の確認
  • 株式台帳・株主情報の管理方法の見直し
  • 株式取得日・取得原因・異動履歴の管理方法について助言
  • 相続時に保存しておくべき関係書類の整理
  • 贈与・売買時の株式譲渡手続きについて説明
  • 譲渡制限株式に関する会社法上の手続きの確認
  • 株主総会・取締役会等の議事録保存について助言
  • 将来の事業承継を見据えた株主ガバナンス体制の整理

結果

今回の相談を通じて、相談者には、株式台帳が単なる株数の一覧表ではなく、会社の所有関係を管理する重要な基礎資料であることをご理解いただきました。

また、今後株式が移動した場合には、その都度、株式台帳だけでなく関連する契約書や議事録なども含めて整理・保存する方針が明確になりました。

これにより、将来、相続や贈与、事業承継が発生した際にも、過去の株式移動を一から調べ直すのではなく、現在の株主関係を速やかに確認できる基盤が整いました。

完成写真 ― 未来の風景

誰が会社を所有しているのかが明確で、安心して次世代へ会社を引き継げる。

株主情報、株式の取得履歴、相続・贈与・売買に関する書類が整理され、必要な時にはすぐ確認できます。

突然相続が発生しても、経営者や後継者が「この株式は誰のものだったのか」と過去を調べ直す必要はありません。

経営者は株式管理の不安から解放され、「誰に、どのように会社を引き継ぐのか」という、本来考えるべき事業承継に集中できています。

この事例のポイント

  • 株式台帳を単なる一覧表ではなく、会社の所有権を管理する資料として捉え直した
  • 株主だけでなく、株式の取得日・取得原因・異動履歴まで管理できる形にした
  • 相続・贈与・売買に伴う関係書類も一体として保存する考え方を整理した
  • 株式が動いてから対応するのではなく、将来の事業承継に備えて平時から管理体制を整えた
  • 税務対策だけではなく、株主ガバナンスという経営の土台から事業承継を支援した

このようなお悩みはありませんか?

  • 株式台帳を長年見直していない
  • 現在の株主が誰なのか正確に確認できていない
  • 相続や贈与によって株式が分散してきている
  • 持株会社を含めた株主構成を整理したい
  • 株式を取得した経緯を示す資料が十分に残っていない
  • 後継者への株式承継をこれから検討したい
  • 自社株評価だけでなく、株式管理全体を見直したい
  • 事業承継について、まず何から始めればよいか分からない

一つでも当てはまる場合は、株式を動かす前に、まず現在の株主関係と管理状況を整理してみませんか。


まずはお気軽にご相談ください

「株式台帳のことだけで相談してよいのでしょうか。」

もちろんです。

三尾会計事務所では、自社株評価や贈与・相続の税務だけを考えるのではなく、現在の株主構成、後継者、経営者の想い、会社の将来像まで含めて事業承継を整理します。

制度や手続きを決める前に、まずは「現在、会社がどのような状態にあるのか」を一緒に確認するところから始めます。

ご相談は、対面・オンライン(Zoom)・メール・お電話に対応しております。