優れた技術を「製品」ではなく「事業」として育てる仕組みを考えた事例

特殊ポリマーを製造・販売する企業から、外部企業から受けている事業支援の提案について、専門家として意見を聞きたいとのご相談をいただきました。

相談者の会社は、衛生用途や防腐用途などに活用できる特殊ポリマーを開発し、すでに製品販売だけでなく、特許使用料による収入も得始めていました。

一方で、事業が成長するにつれて、

  • 生産能力が足りない
  • 営業体制が十分ではない
  • 将来を担う人材が不足している

といった課題が見えてきていました。

そのような中、証券会社から、生産体制の構築や販路開拓を支援する提案を受け、その条件として売上高に応じた成功報酬やストックオプションによる資本参加なども提示されていました。

相談者が最初に確認したかったのは、

「この提案を受けるべきかどうか」

という点でした。

しかし、話を伺っていくと、本当の課題は提案条件の良し悪しだけではありませんでした。


ご相談のきっかけ

相談者は、独自性の高い特殊ポリマーを開発し、販売を進めていました。

製品には一定の市場性があり、今後の成長も期待されていました。

ところが、生産設備は自社で改造した設備を使っており、月間製造能力は約100kgに限られていました。

需要があっても十分な量を供給できず、生産能力そのものが成長の制約になり始めていました。

また、営業についても、技術や製品の魅力を十分に市場へ届ける体制が整っているとは言えませんでした。


表面的な相談は「証券会社の提案を受けるべきか」

証券会社からは、生産体制や販売体制の強化を支援する提案がありました。

その内容には、売上高に応じた成功報酬や、ストックオプションによる資本参加などが含まれていました。

相談者としては、

「この条件は妥当なのか」

「外部にここまで関与してもらうべきなのか」

という点が気になっていました。

しかし、当事務所では、提案条件だけを比較しても本質的な答えにはならないと考えました。


本当の問題は「技術を事業として育てる仕組み」がないこと

製品そのものには競争力があり、市場性も期待できました。

しかし、優れた技術があることと、それが事業として成長することは別です。

技術を事業へ育てるためには、

  • 必要な量を安定して作れる生産体制
  • 市場を開拓する販売体制
  • 事業を継続して運営する人材
  • 必要な資金や外部パートナー

が揃っている必要があります。

今回の会社では、技術はすでにありました。

しかし、それを継続的な事業価値へ変換する仕組みがまだ十分ではなかったのです。


視点を「外部提案の評価」から「誰が事業を育てるか」へ

そこで当事務所では、

「証券会社の提案を受けるかどうかではなく、この技術を今後誰が、どのような体制で育てるのかを先に考えましょう」

と提案しました。

相談者である社長の年齢も考えると、生産設備、営業体制、人材採用、販路開拓のすべてを自社だけで一から整えることには限界があります。

そのため、外部企業とのアライアンスや共同事業は、十分に検討に値する選択肢でした。

一方で、外部へ任せるだけでは、会社の中にノウハウが残らない可能性もあります。

そこで、単なる営業支援ではなく、若い世代の人材が販路開拓や生産体制づくりに参加し、将来的に事業を担える仕組みをつくることが重要だと考えました。


新会社という選択肢も含めて検討

さらに、既存会社の中ですべてを進めることだけが答えではないと考えました。

場合によっては、この特殊ポリマー事業を切り出し、新会社を設立する方法もあります。

その新会社に、

  • 若い経営人材
  • 技術を理解する人材
  • 営業や市場開拓を担う人材
  • 必要に応じて外部パートナー

を集めることで、技術をより成長させやすい組織をつくることができます。

この場合、創業者や現在の経営者は、すべてを自分で抱えるのではなく、技術や理念を次の世代へ渡す立場へ少しずつ移っていくこともできます。


実際に行った支援

当事務所では、今回の相談について、単に証券会社の提案条件を評価するだけでなく、事業全体を整理しました。

  • 特殊ポリマー事業の事業モデルを整理
  • 現在の生産能力と成長上の制約を確認
  • 販売体制と市場開拓上の課題を整理
  • 外部アライアンスの活用可能性を検討
  • 証券会社からの提案内容の論点を整理
  • ストックオプション導入時の留意点を説明
  • 若い人材を事業に参画させる方向性を提案
  • 新会社設立を含む将来の組織体制を検討
  • 将来の事業承継まで見据えた考え方を整理

結果――「提案を受けるか」から「事業をどう残すか」へ考え方が変わった

相談者は、証券会社から提示された条件だけを見て判断するのではなく、まず会社としてどのような体制でこの事業を育てるのかを考える必要があることを理解されました。

また、生産体制の拡充や販路開拓だけでなく、将来を担う若い人材の育成や参画も含めて、長期的な事業展開を考える方向性が整理されました。

今回の相談を通じて、論点は「外部支援を受けるかどうか」から、

「この優れた技術を、10年後も育て続けられる事業にするには何が必要か」

へと変わっていきました。


その後――経営相談では「今ある問題」だけでなく「その先」を考える

技術力の高い企業ほど、

「製品は良いのに売れない」

「需要はあるのに作れない」

という壁に直面することがあります。

その原因が技術そのものではなく、生産、販売、人材、組織の仕組みにあることは少なくありません。

経営相談では、目の前の提案や契約条件だけを見るのではなく、その会社が将来どうなりたいのかを考えながら、必要な仕組みを整理することが重要です。

今回も、証券会社からの提案を評価することから始まりましたが、最終的には、

  • 若い世代への権限移譲
  • 外部企業とのアライアンス
  • 新会社設立の可能性
  • 生産・販売体制の構築
  • 技術そのものの承継

まで話が広がりました。

良い技術を持っていることと、良い事業を持っていることは同じではありません。

技術を事業へ育て、それを次の世代へ渡せる仕組みをつくる。

それも経営相談の重要な役割だと考えています。


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三尾会計事務所の経営相談

目の前の条件だけで判断するのではなく、 生産・販売・人材・組織・事業承継まで含めて、 「この事業を将来どう育てるか」を一緒に整理します。

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