相続税対策のために、これ以上借金を増やすべきか|不動産整理・納税資金・介護・遺言を一体で見直した事例

相続税を下げるために、さらに不動産を建てるべきか。

不動産を多く所有するご家庭から、 一次相続・二次相続の相続税、納税資金、今後の不動産管理、 ご両親の生活や介護、遺言まで含めて今後の方針を整理したいというご相談がありました。

1.相談のきっかけ

今回のご相談の出発点は、 将来発生する相続税の負担でした。

不動産を中心に一定規模の資産があり、 一次相続だけでなく、その後の二次相続まで考えると、 相続税額が大きくなることが予想されました。

一方で、資産の多くが不動産であるため、 相続税を納めるための現金をどのように確保するかという問題もありました。

また、相続税対策の一つとして、 新たに借入を行い建物を建築する案も検討されていました。

2.相談者の状況

ご両親は複数の不動産を保有しており、 資産全体としては相応の規模があります。

しかし、不動産は現金と違い、 相続が発生したからといって、 すぐに納税資金として使えるわけではありません。

さらに、お父様の認知症が進んでいることから、 今後の生活や介護についても考える必要がありました。

将来的には高齢者向け施設への入居なども含め、 ご両親が無理なく生活でき、 ご家族の負担もできるだけ抑えられる環境を考えていく必要があります。

3.表面的な相談

当初のテーマは、 「相続税をどう減らすか」 というものでした。

その中には、 新たに借入をして建物を建てることで、 相続税評価を下げる方法を検討すべきか、 という問題も含まれていました。

しかし、資産全体を確認していくと、 問題は相続税額だけではないことが分かってきました。

4.本当の問題

今回の本当の課題は、「節税」ではなく資産全体をどう整理するかでした。

相続税、納税資金、不動産の管理、借入金、親の生活、介護、遺言。 これらが別々の問題ではなく、一つにつながっていました。

仮に相続税を下げるために新しい建物を建てたとしても、 その後は借入金の返済、建物の維持管理、修繕、入居者対応などが続きます。

ご両親が高齢となり、 将来その管理を子ども世代が引き継ぐことまで考えると、 これ以上資産を増やすことが本当に家族にとってよいのかを、 一度立ち止まって考える必要がありました。

さらに、相続税の負担が大きくても、 納税できる現金が十分に残っていなければ、 相続後に不動産を急いで売却しなければならなくなる可能性があります。

5.提案・判断

そこで今回、 これ以上借入を増やして新築する方向ではなく、 まず現在持っている資産を整理することを基本方針としました。

残す不動産を選ぶ

収益性、将来性、管理負担などを見ながら、次世代へ残す意味のある資産を整理します。

資産をスリム化する

必要に応じて不動産の売却も検討し、資産をより管理しやすい形にします。

現金を確保する

一次・二次相続の納税資金や、ご両親の今後の生活資金を確保します。

相続税を下げることだけを目的にするのではなく、 家族が将来困らない形に資産を組み替える という考え方です。

相続税対策は「節税」だけで考えないことが大切です

不動産が多い家庭では、相続税だけでなく、納税資金、二次相続、親の生活、介護、遺言まで一体で考える必要があります。

相続税対策を家族全体で考える方法はこちら

6.実際に行うこと

今回の相談では、 すぐに不動産を売却したり、 財産を動かしたりすることはしていません。

まずは、ご両親を含めて家族の意思を確認し、 そのうえで資産整理と遺言を進めることにしました。

10月中旬
お母様にも同席いただき、 現在の状況と今後の方向性について再度話し合う。 同時に、戸籍謄本や財産一覧など、 遺言書作成に必要な資料を準備する。

11月中
専門家との間で資料を確認しながら、 誰にどの財産を残すのか、 納税資金をどう確保するのかを整理し、 遺言書の内容を調整する。

12月中旬を目途
お父様を交えて家族で現実的な選択肢と方向性を確認し、 遺言書の作成を完了させる。

7.現時点での結果

この事例は、まだ相続対策が完了した事例ではありません。

しかし、相談前には 「相続税を減らすために、さらに建物を建てた方がよいのではないか」 という考えが中心だったものが、

資産を増やす相続対策から、
家族が管理できる資産へ整理する相続対策へ。

という方向へ変わりました。

一次相続、二次相続、納税資金、 ご両親の生活、介護、遺言までを一つの計画として考えることで、 今後何をすべきかが明確になってきました。

8.その後

今後は、 家族での話し合いと遺言書の作成を進めながら、 不動産一つひとつについて、 残すのか、売却するのか、今後も保有するのかを検討していきます。

また、資産を整理する場合には、 相続税だけでなく、 売却に伴う税金や将来の収益、 ご両親の生活資金なども含めて判断する必要があります。

相続対策は、「相続税を一番安くすること」が目的ではありません。

親が安心して生活でき、 相続が起きたときに納税資金に困らず、 次の世代が無理なく管理できる形で財産を残す。
その状態をつくることが、今回の相続対策の目的です。

不動産が多い相続ほど、「節税」だけで判断しないことが大切です。

一次・二次相続、納税資金、不動産整理、遺言、 そしてご両親の今後の生活まで含めて整理します。