「どこで利益を稼いでいるのか」を見える化し、利益体質への転換を支援した事例

売上が減っていることだけが、会社の問題とは限りません。

むしろ、

「どの顧客が利益を生んでいるのか」
「どの商品が会社の利益を支えているのか」
「どの取引で利益を失っているのか」

が分からないことの方が、経営上は大きな問題になることがあります。

今回の事例では、顧客別・商品別の利益を見える化し、 「売上を見る経営」から「利益構造を見る経営」へ 転換することを支援しました。


この事例から学べること

会社全体の売上高や利益だけを見ていても、 本当に利益を生んでいる顧客や商品は分かりません。

顧客別・商品別に利益を把握することで、

  • 伸ばすべき顧客や市場
  • 価格を見直すべき取引
  • 縮小を検討すべき商品
  • 営業資源を集中すべき分野

が見えるようになります。

利益改善の第一歩は、「どこで利益を稼いでいるのか」を数字で把握することです。


相談のきっかけ

創業100年を超える化粧品・日用品メーカーから、

「長年売上は維持しているものの、利益が低迷しています。 利益体質の会社に変えるには、どうすればよいでしょうか」

という相談を受けました。

会社は大手メーカー向けのOEM製造を中心に、 長年にわたり複数の取引先との取引を続けていました。

売上そのものが大きくなくなったわけではありません。

しかし、営業利益は低迷し、 赤字となる年度も続いていました。


相談者の状況

長年、大手メーカー向けのOEM製造を主力として成長してきた会社でした。

ところが、主力取引先を取り巻く市場環境が変化し、 以前と同じように受注を続けていても、 十分な利益が残りにくくなっていました。

一方で、会社には複数の顧客、商品、製造ラインがありました。

会社全体の売上高や粗利益は把握していましたが、

「どの顧客で、いくら利益が出ているのか」

さらに、

「どの商品が、本当に会社の利益に貢献しているのか」

までは分かっていませんでした。

売上は分かる。

しかし、利益の中身が見えない。

そのため、どこへ営業資源や人員を集中すべきなのか、 経営者が判断しにくい状況になっていました。


表面的な相談は「利益が出ない」

最初の相談は、

「利益が出ない会社を、どうすれば利益体質に変えられるか」

というものでした。

一般的には、

  • 売上を増やす
  • 新規顧客を獲得する
  • 経費を削減する

といった改善策を考えます。

しかし、私たちはすぐに売上拡大策を考えるのではなく、 まず現在の利益構造を確認する必要があると考えました。

なぜなら、

利益が出ない原因が分からないまま売上だけを増やすと、 利益の出ない仕事まで増えてしまう可能性があるからです。


本当の問題は「利益の出ない原因が見えていないこと」

分析を進めると、本当の問題は、 単に利益が少ないことではありませんでした。

「どこで利益が出て、どこで利益を失っているのかが見えていないこと」

が、本当の課題でした。

顧客別の利益が分からない。

商品別の利益が分からない。

製造ライン別の採算も十分に整理されていない。

そのため、

「売上の大きな取引先だから重要だ」

「長年作っている商品だから続けるべきだ」

という判断になりやすくなっていました。

しかし、

売上の大きな顧客が、必ずしも会社に大きな利益を残しているとは限りません。

反対に、売上規模は小さくても、 高い利益率を確保している顧客や商品が存在する場合があります。


「売上を見る」から「利益構造を見る」へ

そこで私たちは、

「売上を見る経営から、利益が生まれる構造を見る経営へ変えましょう」

と提案しました。

最初に必要だったのは、 顧客別・商品別の利益を把握できる仕組みです。

社内に蓄積されていた製造実績データを活用して、 標準原価を設定しました。

そのうえで、 売上と原価を顧客別・商品別に対応させ、 利益率を比較できるようにしました。


実際に行ったこと

まず、製造実績データから商品ごとの標準原価を設定しました。

その基礎データをもとに、

  • 顧客別利益分析
  • 商品別利益分析
  • 商品群別原価率分析
  • 顧客セグメント分析

を行いました。

分析した結果、 顧客や商品によって利益率に大きな違いがあることが分かりました。

そこで、 利益率の高い顧客や市場については、 さらに営業資源を投入することを検討しました。

一方、利益率の低い取引については、

  • 販売価格の見直し
  • 取引条件の変更
  • 製造方法の改善
  • 取引継続そのものの再検討

を行う方向性を示しました。


OEM依存からの脱却も検討

分析を進める中で、 OEM製造への依存度が高いことも中長期的な経営課題として見えてきました。

そこで、

  • 自社ブランド商品の育成
  • 新商品の開発
  • 自社商品の販売強化

についても検討しました。

単に、 「受注したものを製造する会社」 であり続けるのではなく、

自社で商品を企画し、市場へ提案できる会社へ変わっていくこと

も、中長期的な利益改善には重要だからです。


固定費もあわせて分析

利益改善は、粗利益だけを見ればよいわけではありません。

物流費、修繕費などの販売管理費についても確認しました。

売上が増えても、 固定費や物流費が増えれば、 最終的に利益が残らない場合があります。

そのため、

「粗利益を改善すること」と「固定費を管理すること」

の両方から利益改善を検討しました。


実施した専門的支援

  • 管理会計の導入
  • 標準原価の設定
  • 顧客別利益分析
  • 商品別利益分析
  • 商品群別原価率分析
  • 顧客セグメント分析
  • ターゲット市場の選定
  • 低採算取引の条件見直し
  • 新商品戦略の検討
  • 自社ブランド戦略の検討
  • 販売管理費分析
  • キャッシュフロー改善の検討

重要なのは、 分析資料を作ること自体ではありません。

分析した数字を、次の経営判断につなげることです。


結果

分析を行ったことで、経営者は、

「利益改善=売上を増やすことではない」

ことを改めて理解されました。

会社の中には、 利益を生んでいる顧客・商品と、 売上はあっても十分な利益を生んでいない顧客・商品があります。

その違いを把握したうえで、

利益の出る市場へ、人・時間・営業力を集中すること

が重要であるという方向性が明確になりました。

また、 既存のOEM取引だけに依存するのではなく、 自社ブランド商品や新商品を育てていくという 中長期的な成長戦略についても整理することができました。

経営判断の軸が、

「売上はいくらあるか」

から、

「どこで利益を稼いでいるのか」

へ変わったことが、 今回の支援の大きな成果でした。


その後

今回作った仕組みは、 一度分析して終わるものではありません。

顧客構成、商品構成、原材料価格、物流費、市場環境は常に変化します。

そのため、

顧客別・商品別の利益を継続的に確認し、 経営判断に利用する仕組みとして定着させること

が重要です。

管理会計は、 過去の数字を説明するためだけのものではありません。

「どの商品を伸ばすのか」

「どの顧客を増やすのか」

「どの市場へ進むのか」

「どの取引条件を見直すのか」

を判断するための数字です。


三尾会計事務所からのメッセージ

多くの経営者は、 毎月の売上高を確認しています。

しかし、

「その売上の中で、どこから利益が生まれているのか」

まで把握できている会社は、 それほど多くありません。

売上があるのに利益が残らない会社には、 必ず何らかの理由があります。

顧客別、商品別、事業別に数字を分けてみると、 それまで見えなかった会社の姿が見えてきます。

三尾会計事務所では、 決算書を作るだけではなく、 管理会計を活用して、

「経営者が次の判断をできる数字」を作ること

を大切にしています。

売上を見る経営から、

利益構造を見る経営へ。

それが、 持続的に利益を生み出す会社への第一歩です。


こんな経営者の方に参考になる事例です

  • 売上はあるのに利益が残らない
  • どの顧客が儲かっているのか分からない
  • 商品別の原価や利益率を把握できていない
  • 値上げすべき取引を判断できない
  • 売上の大きな顧客を本当に優先すべきか迷っている
  • OEMや特定顧客への依存を減らしたい
  • 管理会計を経営判断に利用したい
  • 利益の出る会社へ体質を変えたい