社長が雑用ばかりしている会社はなぜ成長しないのか|経営者が手放すべき仕事

「社長なのだから、誰よりも働かなければならない」

その考え方自体が間違っているわけではありません。 しかし、社長が会社の前の道路を毎朝掃除していたり、社員に見られたくないからと給与計算を自分で行っていたり、細かな事務作業まで抱え込んでいる会社を見ることがあります。

本人は「会社のために働いている」と考えているのでしょう。 けれども、本来社長がしなければならない仕事を誰がやっているのでしょうか。

会社が成長しない原因は、仕事量ではなく「役割」が曖昧なことがあります。
社長には社長の仕事があり、管理職には管理職の仕事があり、現場で働く社員には現場の仕事があります。
それぞれが自分の役割を果たして、初めて組織は組織として機能します。

社長の仕事は「自分が一番動くこと」ではない

会社組織を単純に考えてみましょう。

営業、製造、購買、経理など、それぞれの分野で実際に仕事をする社員がいます。 そして、その社員の仕事を管理する管理職がいます。 さらに、その管理職である幹部をまとめ、会社全体をどこへ進めるのかを決めるのが経営者です。

社員
自分に与えられた仕事を実行する
管理職
社員の行動・仕事・成果を管理する
経営者
幹部を動かし、会社全体の方向を決める

ところが、実際にはこの境目が曖昧になっている会社が少なくありません。

社長が社員と同じ仕事をしている。
管理職が管理をせず、自分で現場作業をしている。
社員は誰から管理されているのか分からない。

これでは、人数が増えても組織にはなりません。

「自分でやった方が早い」が組織を弱くする

特に優秀な経営者や管理職ほど、「自分でやった方が早い」と考えがちです。

生産管理の責任者なのに、工場が忙しくなると自分も製造ラインに入り、作業を手伝う。 短期的には確かに助かります。

しかし、その間に誰が生産計画を確認するのでしょうか。 誰が納期の遅れを予測するのでしょうか。 誰が社員の作業状況を見て、問題を発見するのでしょうか。

管理職がワーカーになった瞬間、管理する人がいなくなります。

現場を手伝うこと自体が悪いのではありません。
問題なのは、「管理職として何をしなければならないのか」が明確になっていないことです。

社長についても同じです。

道路掃除をすることは立派な行動かもしれません。 給与計算も重要な仕事です。 しかし、それを社長自身がしなければならない理由があるでしょうか。

社長にしかできない仕事は別にあります。

  • 会社をどこへ進めるのかを決める
  • 幹部に何を任せるのかを決める
  • 利益計画や資金繰りを考える
  • 重要な顧客や取引先との関係をつくる
  • 新しい事業や投資を判断する
  • 次の人材を育てる

社長が雑用で一日を使ってしまえば、これらの仕事が後回しになります。

役割が曖昧な会社は、社長が忙しくなり続けます。

「誰が何をする会社なのか」を整理するところから、業務改善は始まります。

今の組織について相談する

後継者ほど「役割」を明確にする必要がある

この問題は、事業承継直後の後継者に特に重要です。

先代社長は長年の経験によって、営業も、製造も、顧客も、社員も分かっています。 そのため、本人の頭の中だけで会社を動かせてしまうことがあります。

しかし、その会社を引き継いだ後継者が、同じことをしようとしてもうまくいきません。

むしろ後継者が最初にするべきなのは、「先代と同じように何でもできる社長」になることではなく、 会社の仕事を整理し、役割を明確にすることです。

事業承継で引き継ぐべきものは、役職だけではありません。

誰が仕事をし、誰が管理し、誰が判断するのか。
会社が組織として動く仕組みまで引き継ぐ必要があります。

仕事を「人」ではなく「役割」で考える

組織を作るためには、まず会社の仕事を明確に定義します。

「田中さんがやっている仕事」「鈴木さんしか分からない仕事」という整理ではありません。

営業担当者がすべきこと。
営業管理職がすべきこと。
生産担当者がすべきこと。
生産管理者がすべきこと。
経営者がすべきこと。

このように、まず役割で仕事を整理します。

そのうえで、各役割について、

  • 何をするのか
  • 何を管理するのか
  • 何を報告するのか
  • 何を判断できるのか
  • 何について責任を持つのか

を決めます。

こうして初めて、「社長がいなくても仕事が進む会社」「管理職が管理する会社」になっていきます。

社員は、役割の混乱にも気づいている

経営者から見ると、「うちは問題なく回っている」と感じるかもしれません。

しかし現場では、

  • 誰に相談すればよいか分からない
  • 管理職が実務に追われて判断してくれない
  • 同じ仕事を複数の人がやっている
  • 社長に確認しないと何も決められない
  • 管理職によってやり方が違う

といった問題に社員が気づいていることがあります。

こうした現場の声を集め、業務の役割や管理の仕組みを見直すことも、業務改善の重要な一歩です。

社長が忙しい会社を改善するには、社長の時間管理だけを見ても解決しません。
社員・管理職・経営者の役割そのものを見直す必要があります。

まとめ|社長にしかできない仕事をする

会社が成長するために必要なのは、社長が誰よりも雑用をこなすことではありません。

社員は自分の仕事をする。
管理職はその仕事を管理する。
幹部は部門を動かす。
そして社長は、その幹部を動かし、会社全体の未来を考える。

この役割分担ができて初めて、組織は組織として機能します。

特に後継者は、先代社長の仕事をすべて真似する必要はありません。

「自分が何をするか」ではなく、「会社の中で誰が何をするのか」を決める。

それが、事業承継後の会社を組織として成長させるための重要な仕事ではないでしょうか。

役割が曖昧な会社を、組織として動く会社へ。

三尾会計事務所では、社員の声や実際の業務を確認しながら、役割・業務フロー・管理の仕組みを整理する業務改善を支援しています。