生前贈与はできる?生前贈与と相続税の関係や対象となる財産について徹底解説!
遺産相続の時には大きな相続税がかかります。節税のために生前贈与を検討している方も多いですが、実は存命しているときに贈与した財産がすべて生前贈与として扱われるわけではありません。
とはいえ、そもそも生前贈与と相続税の関係性などについて知らないという方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、適切に生前贈与を行うために必要な情報について詳しく解説していきます。
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生前贈与と相続税の関係
生前贈与は存命の間に自分の財産を受け継ぐ方法です。そして生前贈与は、相続税に対する節税対策としても知られています。
亡くなったタイミングで遺産のすべてを相続人が相続する場合、財産のすべてに対して相続税がかかってしまいます。一方で生前贈与であれば分割して財産を受け継ぐことができ、年間110万円以内の贈与であれば贈与税がかかりません。
例えば、相続できる財産が1000万円の場合、死亡したタイミングで相続人が受け継ぐ場合は1000万円に対して相続税が課税されます。これが、死亡する3年前までに分割して1年に100万円を5年間続け500万円の贈与を行った場合、贈与税は課税されず相続する500万円のみに相続税が課税されます。
また、生前贈与は民法で相続人が決められている相続とは異なり、誰に財産を贈与しても大丈夫です。複数人に贈与することで財産のほとんどを生前に贈与することも可能なのです。
3年以内に生前贈与された財産は相続税の課税対象
生前贈与をするときに気をつけなければいけない点もあります。それが、死亡から遡って3年以内に受け継がれた財産については生前贈与としては扱われずに「相続」に加算されて扱われてしまうという点です。
この制度のことを「生前贈与加算」といいます。生前に贈与した財産であっても3年以内に死亡してしまった場合は相続税に加算されてしまうのです。
そのため、生前贈与は死期が近くなってからではなく、長期的なスパンで徐々に贈与することが大切です。
また、税制改正により令和6年以降は、この「3年以内」という年数は「7年以内」に延長されます。新たに追加された3年以上7年未満の4年間については100万円以内の贈与であれば相続に加算されないという改定がされました。こちらについても合わせて抑えておくといいでしょう。
相続税の生前贈与加算の対象になる人
生前贈与加算の対象になる人は、生前贈与を受け継いだ人の中でも法定相続人として遺産を受け継ぐ権利のある人のみです。
つまり、民法によって定められている配偶者・子ども・きょうだいという法定相続人もしくは遺言書に記されている相続人にのみ生前贈与加算が適用されます。
相続人ではない孫や子どもの配偶者などが生前贈与を受け取った場合、相続の対象にならない限りは生前贈与加算による課税は発生しません。
相続税の生前贈与加算の対象になる財産
生前贈与で贈与された財産の中には、生前贈与加算の対象になる財産と対象にならない財産があります。
生前贈与加算の対象外となる財産
- 贈与税の配偶者控除の特例の適用を受けているまたは受けようとする財産のうち、その配偶者控除額に相当する金額
- 直系尊属から贈与を受けた住宅取得等資金のうち、非課税の適用を受けた金額
- 直系尊属から一括贈与を受けた教育資金のうち、非課税の適用を受けた金額
- 直系尊属から一括贈与を受けた結婚・子育て資金のうち、非課税の適用を受けた金額
生前贈与しても税金を払わなくていい場合とは?
ここまでお伝えしている通り、生前贈与は相続税を節税する効果はあるものの、死亡のタイミングによって相続税を必ずしも節税できるとは限りません。
そこで、ここでは生前贈与をしても課税されない場合について詳しく解説していきます。
暦年贈与による生前贈与と基礎控除
暦年贈与とは、1月1日〜12月31日の間に受け取った生前贈与の金額が110万円を超えなければ贈与税が課税されずに財産を贈与することを指します。
また、贈与金額が110万円を超えた場合であっても、110万円分は基礎控除として課税されないため、例えば300万円生前贈与した場合は190万円に対して贈与税が課税されます。
注意点
ただし、死亡のタイミングから遡って3年以内の贈与額は相続とみなされて相続税が発生してしまいます。
生活費や教育費として生前贈与をする
夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費や教育費に充てるために生前贈与された財産に関しては生存贈与加算の対象にはなりません。
注意点
このケースが適用される場合は”通常必要なもの”として認められる場合のみとなるため、不動産の購入などで受け取った財産を使用することはできません。
教育資金の一括贈与
教育資金として生前贈与を一括贈与された場合、一定の条件を満たすことで贈与税が非課税になり、生前贈与加算からも対象外となります。
注意点
教育資金として生前贈与を受け取った場合、受け取った金額すべてを教育資金として使用する必要があります。また、生前贈与を受け取った人が30歳になるまでに使い切らなかった金額については、贈与税が課税されてしまいます。
結婚・子育て資金の一括贈与
香典・花輪代・贈答・祝物などの金品や、直系尊属から生前贈与された結婚・子育て資金のうち一定の条件を満たすものを一括で生前贈与された場合においても、生前贈与加算の課税対象外となります。
注意点
ただし、社会通念上適切と判断できる場合に限ります。
住宅取得資金等の贈与
父母や祖父母など直系尊属からの生前贈与により、自己の居住の用に供する住宅用の家屋の新築、取得または増改築などに充てるために贈与された財産を使用したうち、一定の要件を満たす場合に贈与税が非課税となります。
注意点
贈与税が非課税になる期間が令和4年1月1日から令和5年12月31日までの間と限られています。
相続時精算課税制度
相続時精算課税制度とは、父母や祖父母などの直系尊属から生前贈与された財産が2,500万円までの場合に贈与税が非課税になる制度です。
注意点
生前贈与のときは非課税ですが、このとき受け継いだ財産は相続時には課税対象になります。そのため、遺産の総額が基礎控除を超えた場合は相続時精算課税制度が適用された財産と相続時の遺産を合わせた金額に対して課税されます。
不安ならプロに相談するのも◎
生前贈与を活用することで相続税を節税することができますが、専門的な知識が必要になるため、節税について不安がある場合はプロに相談することがオススメです。
特に生前贈与加算の対象外となる制度を活用する場合にはさまざまな条件が設定されています。自分だけで調べて、正確な対応をするのは、困難だと言えるでしょう。
本記事を執筆している三尾会計事務所では、生前贈与や相続税について専門家の視点で的確にアドバイスしています。初回のご相談は無料なので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
まとめ
この記事では、適切に生前贈与を行うために必要な情報について詳しく解説していきました。
生前贈与加算は相続税の金額を決める上でも大きなポイントになるため、加算されないように生前贈与を受けることでさらなる節税が見込めます。
ぜひこの記事を参考にして生前贈与での節税効果を高めてみてください。