生前贈与と相続税の関係|2026年に知っておきたい暦年贈与・相続時精算課税の基本

「相続税を減らすために、生前贈与をしておいた方がよいのではないか」と考える方は少なくありません。 ただし、生前贈与は「毎年110万円までなら大丈夫」とだけ考えると不十分です。 大切なのは、贈与税だけを見るのではなく、最終的な相続まで含めて、誰に・何を・いつ移すのかを設計することです。

2026年の生前贈与では、
「暦年課税」と「相続時精算課税」の違いを理解し、相続全体の中で使い分けることが重要です。

2024年から贈与税・相続税のルールは大きく変わりました。 暦年課税では、相続開始前の贈与を相続税に加算する対象期間が段階的に延長され、 相続時精算課税には年間110万円の基礎控除が設けられています。

そのため、以前の感覚のまま「暦年贈与を毎年続ければよい」「相続時精算課税は使いにくい」と判断するのは適切ではありません。 この記事では、生前贈与と相続税の関係を、2026年時点の制度に合わせて実務目線で整理します。

この記事のポイント
  • 生前贈与には「暦年課税」と「相続時精算課税」がある
  • 暦年課税の相続前加算は将来的に7年へ延長される
  • 相続時精算課税には年間110万円の基礎控除がある
  • 不動産や自社株は「贈与すれば得」と単純には言えない
  • 税額だけでなく、家族関係・名義・納税資金まで一体で考える

生前贈与とは

生前贈与とは、本人が生きているうちに、現金、不動産、株式などの財産を子や孫などへ移すことです。 将来の相続財産を減らす効果が期待できる場合があるほか、本人の意思で「誰に何を渡すか」を決めやすいという利点があります。

一方で、財産を渡せば必ず相続税が減るわけではありません。 贈与税が発生する場合もあれば、相続時に贈与財産が相続税の計算へ加算される場合もあります。 不動産や自社株であれば、評価方法や名義変更の費用、管理や経営権の問題まで考える必要があります。

生前贈与には2つの基本制度がある

個人から財産の贈与を受けた場合の贈与税には、大きく分けて「暦年課税」と「相続時精算課税」があります。 どちらが適しているかは、贈与額だけでなく、贈与者の年齢、受贈者、財産の内容、将来の相続税額などで変わります。

暦年課税
毎年1月1日から12月31日までの贈与額を基に贈与税を計算します。年間110万円の基礎控除があります。
相続時精算課税
一定の要件のもとで選択し、贈与時と将来の相続時を通算して課税関係を整理する制度です。2024年から年間110万円の基礎控除が設けられました。

暦年課税|110万円以下でも相続税と無関係とは限らない

暦年課税では、1年間に受けた贈与の合計額から110万円の基礎控除を差し引いて贈与税を計算します。 そのため、「年間110万円までなら贈与税がかからない」という説明を聞いたことがある方も多いでしょう。

ただし、相続や遺贈で財産を取得した人が、被相続人から一定期間内に暦年課税による贈与を受けていた場合、 その贈与財産の価額が相続税の課税価格へ加算されることがあります。

2026年に特に注意したい点
2024年1月1日以後の贈与から加算対象期間は段階的に延長されています。 2026年12月31日までに相続が開始した場合は、原則として相続開始前3年以内が加算対象ですが、 将来的には相続開始前7年以内まで対象期間が広がります。

つまり、生前贈与は「早く始めればよい」という単純な話でも、「110万円ずつなら必ず有利」という話でもありません。 相続がいつ発生するかは分からないからこそ、贈与だけでなく遺言や財産全体の分け方まで一緒に考える必要があります。

相続時精算課税|年間110万円の基礎控除が新設

相続時精算課税は、2024年から大きく使い勝手が変わりました。 一定の要件を満たして制度を選択すると、年間110万円の基礎控除があり、さらに基礎控除を超える部分について累計2,500万円までの特別控除があります。 特別控除を超えた部分には一律20%の税率で贈与税を計算します。

また、相続時には、相続時精算課税を適用した贈与財産について一定の方法で相続財産へ加算して相続税を計算します。 したがって、単に「贈与時の税金が少ないから有利」と判断する制度ではありません。

「110万円」という数字だけで制度を選ばないことが大切です。

財産の種類、将来の値上がり・値下がり、家族構成、相続財産全体まで見て判断します。

生前贈与は「いくら贈るか」より「何をどう移すか」

現金、不動産、自社株など、財産の性質によって適した方法は変わります。相続まで含めて一緒に整理します。

今の状況を相談する

生前贈与を考えるときの5つの確認ポイント

1.誰に贈与するか
子、孫、後継者など、将来の相続との関係を確認します。
2.何を贈与するか
現金、不動産、自社株では、税務・管理・将来の収益性が異なります。
3.暦年課税か相続時精算課税か
目先の贈与税ではなく、将来の相続まで比較します。
4.贈与後の生活資金は十分か
相続税対策を優先しすぎて、親世代の生活資金を減らさないことも重要です。
5.家族全体で公平か
他の相続人との公平、遺留分、将来の遺産分割まで考えます。

不動産や自社株の贈与は特に慎重に

不動産や自社株は、現金と違って「渡した後」まで考える必要があります。 賃貸不動産であれば、今後の家賃収入を誰が受け取るのか、借入金をどうするのか、管理を誰が担うのかという問題があります。 自社株であれば、財産価値だけでなく議決権、つまり会社の経営権に直結します。

また、不動産を贈与する場合には、贈与税だけでなく登録免許税や不動産取得税なども検討が必要です。 自社株についても、現在の株価だけでなく、将来の利益や会社の承継方針と一緒に考える必要があります。

生前贈与は、相続対策全体の一部です

遺言、遺産分割、納税資金、不動産、自社株、事業承継などと一緒に設計することで、はじめて全体として意味のある対策になります。

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節税だけを目的にしないことが重要

相続対策を考えると、どうしても「いくら税金が減るか」に目が向きます。 しかし、本来の目的は、築いてきた財産を誰にどのような形でつなぐのかを決め、家族が納得できる状態をつくることです。

税金を減らせても、親の生活資金が不足したり、不動産が共有になったり、自社株が分散したりすれば、別の問題が生まれます。 税額、財産の使い方、家族関係、事業承継を一つの流れで見ることが大切です。

まとめ|2026年の生前贈与は制度選択と全体設計が重要

生前贈与は、相続対策として有効になる場合があります。 しかし、制度改正後は従来以上に「暦年課税と相続時精算課税のどちらを使うか」「どの財産を誰に移すか」という判断が重要になっています。

財産額、年齢、家族構成、不動産、自社株、将来の相続税、納税資金。 これらを一度整理すると、本当に生前贈与をすべきか、いつ、どの程度行うべきかが見えてきます。

生前贈与だけを切り離して考えず、相続全体の設計の中で判断することが大切です。

生前贈与と相続を、一つの流れとして整理します

暦年課税、相続時精算課税、不動産、自社株、遺言、遺産分割、納税資金まで一体で検討します。