後継者はいるのに事業承継できない――会社を立て直して「引き継げる会社」をつくった事例

産業機械向け設備の設計・部品調達・組立を行う製造業の経営者から、ご子息への事業承継についてご相談をいただきました。

後継者となるご子息はすでに会社で働いており、技術面・製造面では重要な役割を担っていました。

しかし、会社には受注減少、多額の借入金、人員減少などの課題が残っていました。

この事例のポイント

後継者は決まっていた

ご子息が技術面では会社を支えていました。

会社の体力が弱っていた

受注減少、借入金、人員減少が重なっていました。

承継より先に経営改善

まず「引き継げる会社」に戻す必要がありました。

親子で将来像を共有

経営改善と事業承継を並行して進める方向性を整理しました。


ご相談のきっかけ

相談企業は、産業機械向けの設備設計から部品調達、組立までを手掛ける技術力の高い製造会社でした。

最盛期には10名程度の社員がいましたが、設備投資需要の減少などから受注が落ち込み、相談時点では社長とご子息を中心とした少人数で事業を継続していました。

経営者は高齢となり、今後はご子息へ会社を引き継ぎたいと考えていました。


表面的な相談は「息子へどう会社を引き継ぐか」

当初の相談テーマは、事業承継の方法でした。

しかし、会社の状況を確認すると、単に株式や代表権を移すだけでは解決できない問題が見えてきました。

問題は「誰に引き継ぐか」ではなく、
「今の会社をそのまま引き継いで経営できるか」でした。

本当の課題

会社には技術力や既存顧客との信頼関係が残っていました。

一方で、後継者が安心して経営を引き継げる状態にはなっていませんでした。

受注体制

現場対応に追われ、新規営業に十分な時間を使えていない。

資金繰り

会社借入と個人借入があり、将来の返済計画を整理する必要がある。

生産体制

人員減少の中で、どこまで受注・生産できるかを見直す必要がある。

後継者への経営移行

技術だけでなく、数字・資金・金融機関対応まで理解する必要がある。


視点の転換

そこで、事業承継を急ぐのではなく、まず会社を再び安定して経営できる状態へ戻すことをご提案しました。

事業承継を進める前に、
「後継者が引き継げる会社」をつくる。

金融機関とも十分に協議し、経営改善計画を策定したうえで、必要に応じて一定期間の返済負担を軽減し、その時間を会社の立て直しに使う方向性を整理しました。

返済軽減そのものが目的ではありません。

生まれた時間と資金余力を、会社の収益力回復に使うことが目的です。


立て直し期間に取り組むこと

技術の強みを再整理

今後も競争力を発揮できる技術・ノウハウを明確にする。

受注体制の見直し

既存顧客だけに依存せず、新規受注を獲得できる仕組みを考える。

生産能力の確認

現在の人員で受けられる仕事量を把握し、無理のない体制をつくる。

数字の共有

後継者が売上・利益・資金繰りを継続的に把握できるようにする。


実際に行った支援

  • 事業承継方針の整理
  • 会社の収益・借入状況の確認
  • 経営改善計画策定の方向性整理
  • 金融機関との協議方法について助言
  • 資金繰り改善の方向性を整理
  • 受注・生産体制の見直し
  • 後継者との情報共有方法を提案
  • 経営改善と承継を並行して進めるロードマップを整理

結果

相談者には、事業承継は株式や代表権を移せば完了するものではないことをご理解いただきました。

承継の順番が明確になった

まず経営改善、その後に承継という優先順位が整理されました。

親子で会社の現状を共有

ご子息も会社の数字や課題を把握しながら進める方向になりました。

金融機関対応も一体で整理

資金繰りと経営改善を踏まえた説明方針を整理できました。


三尾会計事務所の事業承継支援

事業承継とは、単に会社を次の世代へ渡すことではありません。 資金繰り・収益力・受注体制・金融機関対応まで整え、 「後継者が経営できる会社」をつくってから引き継ぐことが重要です。

事業承継は、会社を立て直すことから始まる場合もある

後継者がいるからといって、すぐに承継を進めることが正解とは限りません。

会社の収益力が弱まり、借入負担が重く、将来への道筋が見えていないのであれば、まず会社を立て直す必要があります。

事業承継とは「会社を譲ること」ではなく、「未来へ引き継げる会社をつくること」。