養子縁組の解消をめぐる争いから相続税の物納まで――相続人の確定と納税を最後まで支援した事例

高級住宅地に数百坪の自宅敷地を所有する方から、将来の相続についてご相談をいただきました。

財産の大半が不動産であり、当時の相続税制で試算すると、相続税は億単位になることが見込まれていました。

さらに、先夫との間に子がなく、親族関係も複雑でした。

ご本人は親族の子を養子として迎えており、その方が将来の相続人になることを前提としていました。

ところが、ご相談から1年も経たないうちに相続が発生し、相続手続きを進める中で、想定していなかった重大な問題が明らかになりました。

この事例のポイント

相続税は億単位

財産の大半が高級住宅地の土地で、巨額の相続税が見込まれました。

相続人に重大な問題

相続開始後、養子縁組が離縁されている戸籍上の記録が見つかりました。

申告期限が迫る

相続人をめぐる争いが解決しないまま、相続税申告期限が近づきました。

最後は土地を物納

納税資金が不足したため、土地を整理し、国への物納まで対応しました。


ご相談の背景

ご本人には先夫との間に子がなく、何も対策をしなければ、兄弟姉妹や、すでに亡くなった兄弟姉妹の子である甥・姪などが相続人となる可能性がありました。

そこで、ご本人は親族の子を正式に養子としていました。

財産の中心は、高級住宅地にある数百坪の自宅敷地でした。

資産価値は高いものの、現預金が十分にあるわけではありません。

「財産はある。しかし、相続税を現金で払えるとは限らない。」

不動産を多く所有する相続では、現在でも重要な問題ですが、この案件ではその問題が極めて大きな形で現れました。


相続発生後、戸籍から想定外の事実が判明

ご相談から1年も経たないうちに、ご本人が亡くなられました。

予想していたとおり、相続税額は非常に大きなものとなりました。

そこで相続税申告の準備を進め、法定相続人を確認するため戸籍を取得したところ、重大な事実が判明しました。

養子であるはずの方との養子縁組について、戸籍上は離縁したことになっていたのです。

そのまま戸籍を前提にすれば、養子ではなく、ご本人の兄弟姉妹側が法定相続人となります。

相続税の計算以前に、「誰が相続人なのか」が確定しない状態になりました。

申告期限は、相続争いの解決を待ってくれない

相続人をめぐる問題については弁護士にも入っていただき、離縁届そのものの有効性が争われることになりました。

しかし、相続税には申告期限があります。

裁判が終わるまで申告をしない、という選択はできません。

そこで、その時点の戸籍関係と法的状況を踏まえ、関係者と協議しながら、まず期限内に相続税申告を行いました。

相続人の確認

戸籍を収集し、申告時点での法定相続関係を確認しました。

期限内申告

裁判が継続中でも、税務上必要な申告を期限内に行いました。

遺産分割は保留

相続人自体が争われていたため、財産配分については判決を待ちました。

法律と税務を並行

弁護士による相続人確定の手続きと、税務申告を並行して進めました。


裁判により、本来の相続関係が確認された

その後の手続きにより、問題となった離縁届は真正なものではないと判断され、当初想定されていた養子関係を前提とした相続関係に戻ることになりました。

結果として、兄弟姉妹側ではなく、養子となっていた親族が相続することになりました。

相続では、財産評価や税金だけでなく、「誰が相続人であるか」そのものが争われることがあるということを、改めて痛感した案件でした。

相続人関係が複雑な場合や、不動産が多く納税資金に不安がある場合は、 相続発生後ではなく、できるだけ早い段階で整理することが重要です。

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次の問題は「相続税をどう払うか」

相続人が確定しても、最大の問題が残っていました。

巨額の相続税を納めるための現金がなかったのです。

相続財産の中心は数百坪の土地でした。

土地の価値は高くても、そのままでは納税資金にはなりません。

そこで、土地の一部を国に納める物納を検討しました。

「土地なら何でも物納できる」わけではない

物納を検討する中で、大きな実務上の課題がありました。

国がどのような土地でも収納してくれるわけではありません。

国が受け入れることができる状態へ土地を整える必要があります。

この案件では、広大な敷地上に自宅建物がありました。

そこで建物を取り壊し、土地を整理したうえで、敷地のおよそ半分を物納する方向で財務当局との調整を進めました。

土地の状況を確認

物納対象として国が収納可能な状態かを確認しました。

建物を整理

土地を物納できる状態にするため、敷地上の建物を整理しました。

財務当局と協議

収納条件を確認しながら、必要な手続きを進めました。

土地の一部を物納

最終的に敷地の一部を国へ納め、相続税の納税を完了しました。


結果――相続人確定から物納まで完了

相続人を確定

養子関係をめぐる争いを経て、最終的な相続関係が確定しました。

申告期限にも対応

裁判中であっても、税務上必要な申告を期限内に進めました。

物納で納税完了

現金不足という課題に対し、土地を整備して物納まで完了しました。

三尾会計事務所の相続支援

相続税申告書を作成するだけでは、相続が終わらないことがあります。
相続人の確認、財産評価、法律問題、納税方法まで、 「実際に相続を終わらせるところ」まで考えることが重要です。

この案件から学んだこと

この案件では、相続の難しさを強く実感しました。

高額な不動産があることだけが問題ではありません。

相続人同士の関係、戸籍、養子縁組、遺産分割、申告期限、納税資金。

一つの相続の中で、法律・税務・不動産・資金がすべてつながっています。

相続は「税額を計算して終わり」ではありません。
誰が相続し、どう分け、どう納税し、最後まで手続きを終えるか。
そこまで見届けて初めて、相続支援は完了します。

この案件は、私たちにとって、その後の相続業務の考え方を形づくる重要な経験となりました。