会社に多額の含み損があるとき、再建前に確認すべき5つのこと

会社の業績が回復し、ようやく利益が出始めた。そのタイミングで、思った以上に法人税が発生し、資金繰りが苦しくなる。長年続く中小企業では、このようなことが起こり得ます。

原因は、現在の売上や利益だけではありません。過去に発生した不良債権、回収や売却が難しい資産、十分に処理されていない減価償却、古い事業のために持ち続けている設備など、貸借対照表に残る含み損が影響していることがあります。

会社を立て直すとき、利益を出すことはもちろん重要です。しかし、利益が出るようになった後に、その利益を何に使える会社なのかを確認しなければなりません。成長投資、借入返済、人材採用に回せるのか。それとも、過去の課題や税負担の処理に追われるのか。その違いは、再建の成否を大きく左右します。

今回は、会社に多額の含み損があるとき、再建を始める前に経営者が確認すべき五つのことを整理します。

この記事で確認する五つのこと

1.帳簿上の資産は、本当に資産といえるか

決算書に計上されている資産が、すべて同じように会社の力になるわけではありません。例えば、長期間回収できていない売掛金、使われなくなった在庫、事業に不要になった設備、実際には売却が難しい不動産などは、帳簿に残っていても、必要なときに現金化できるとは限りません。

また、以前から使っている設備について、本来より少ない減価償却しか行われていない場合があります。帳簿上は資産が大きく見えても、実際には価値が下がっていることがあります。この差が大きい会社では、貸借対照表だけを見て「財務内容は悪くない」と判断するのは危険です。

再建の第一歩は、資産を責めることではなく、実態を把握することです。回収できるもの、事業に使えるもの、処分すべきもの、将来の負担になり得るものに分けて整理します。ここが曖昧なままでは、正しい事業計画も資金計画も作れません。

2.過去の損失が、将来の税負担をどう変えるか

含み損や処理されていない損失が大きい会社では、業績が改善して利益が出始めたときに、税務上の負担が先行することがあります。会計上・経営上は過去の問題を抱えているのに、税務上は当期の利益に対する納税が必要となる場合があるためです。

これは「税金が高い」という単純な問題ではありません。本来であれば、将来の商品開発、設備更新、人材育成、借入返済に回したい資金が、再建の初期段階で外に出ていく可能性があるという問題です。

もちろん、どのような資産や損失を、いつ、どのように処理できるかは個別に異なります。重要なのは、利益計画を作る際に、売上と経費だけでなく、納税を含めた資金の流れまで確認することです。「黒字になったのに、お金が残らない」という状態を防ぐためにも、税務と資金繰りを別々に考えない必要があります。

3.利益改善と資金繰り改善が一致しているか

再建中の会社では、利益が改善しているのに資金繰りが楽にならないことがあります。売上が増えるほど売掛金や在庫が増える、設備投資や仕入れが先行する、借入返済が重い、といった事情が重なるためです。

そこに過去からの含み損が加わると、会社が使える資金はさらに限られます。損益計算書で利益が出ていることだけを見て、「再建は順調だ」と判断するのは早すぎます。

経営者が確認すべきなのは、毎月いくらの現金が残るのか、借入返済後にどれだけ余力があるのか、納税資金を確保できるのかという点です。利益を生む事業と、現金を生む事業は必ずしも同じではありません。資金繰り表を通じて、利益と現金の違いを把握することが必要です。

4.今の会社で再建することが最善か

含み損が見つかったからといって、すぐに新会社を作るべきということではありません。現在の会社に残る価値、取引先や金融機関との関係、許認可、従業員、借入の状況などを考えると、今の会社のまま再建するほうが合理的な場合も多くあります。

一方で、将来性のある事業と、過去からの課題を同じ会社に抱え続けることが、成長の妨げになる場合もあります。そのようなときには、新会社の設立、事業譲渡、会社分割などを含め、事業をどの器で続けるべきかを検討します。

ここでの判断は、節税だけを目的にするものではありません。事業を継続し、従業員の雇用と取引先との関係を守り、将来の成長に資金を回せる体制をつくれるかどうかが基準です。制度の名前から入るのではなく、会社をどう再出発させたいのかを先に明確にします。

5.誰と、どの順番で判断を進めるか

含み損の整理や事業再編は、経営者だけで決められる問題ではありません。株主、役員、金融機関、主要取引先、従業員など、会社を支える関係者への影響を考える必要があります。

まずは決算書・試算表・資金繰り・借入内容・主要な資産と契約関係を整理し、会社の現状を見えるようにします。そのうえで、今の会社で再建する場合と、新しい体制へ事業を移す場合の両方を比較します。必要な関係者に、何をどの順番で説明するかも、再建計画の一部です。

大切なのは、過去の問題を理由に未来をあきらめないことです。現状を正確に把握し、事業に将来性があるなら、その価値を次の成長へつなげる方法を考える。再建とは、単に損失を処理することではなく、会社が再び前へ進める状態をつくることです。

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含み損・資金繰り・事業再編でお悩みの方へ

「利益は出そうだが、会社に過去の課題が残っている」「今の会社のまま再建してよいのか分からない」。
そのような段階でも、税務・資金・事業の将来性を一体として整理し、次の判断を一緒に考えます。

※資産の評価、税務上の取扱い、事業再編の方法は、会社ごとの財務内容、契約関係、株主構成などによって異なります。個別の事情を確認したうえで検討することが必要です。