製造業の業務改善|限界利益率の変動原因を社員アンケートで発見、工場全体の業務改善につなげた事例

樹脂加工工場で製造工程と資料を確認しながら業務改善について話し合う社長と社員
現場で起きている問題

樹脂加工業を営む会社で、製造業の業務改善を進める中、毎月の試算表を確認すると限界利益率が大きく変動していることが分かりました。

ところが月別の数字を継続して見ていくと、ある疑問が浮かびました。

「なぜ、毎月これほど限界利益率が変わるのだろうか。」

売上高から材料費と外注加工費を差し引いた限界利益率が、月によって大きく変動していたのです。

「限界利益率とは、売上から材料費や外注加工費などを差し引いた利益が、売上に対してどの程度残っているかを見る指標です。」

この事例から学べること

  • 試算表は「見るもの」ではなく、「なぜ数字が動いたのか」を考えるための資料であること
  • 利益率の悪化は、経理上の問題ではなく製造現場の問題から生じている場合があること
  • 経営者が把握していない問題を、社員はすでに知っていることがあること
  • 無記名アンケートによって、表面化していない現場の課題を把握できること
  • 売上を増やすだけでなく、社内から流出している利益を止めることも重要な業務改善であること

ご相談のきっかけ

会社では、毎月の試算表を会計事務所と共有し、売上や利益を確認していました。

その中で着目したのが、材料費と外注加工費を差し引いた限界利益率の大きな変動でした。

会社からは、「月によって製造している製品の組み合わせが違うので、利益率も変わるのではないか」という説明がありました。

確かに製品の種類は多くあります。しかし、基本的には同じような樹脂材料を加工し、製品は特定の元請会社へ納入しています。

それだけで毎月の利益率が大きく変動するのか、疑問が残りました。

数字だけでは原因が分からなかった

考えられる原因はいくつかありました。

製品によって歩留まり率が異なり、通常以上に材料を使用しているロットがあるのかもしれません。

あるいは、月間材料費を計算する際に使用している月末棚卸高そのものが正確ではない可能性もあります。

販売単価、材料使用量、棚卸、不良品などを確認しましたが、試算表だけを見ていても原因を特定することはできませんでした。

本当の問題は「工場の中」にあるのではないか

そこで私たちは発想を変えました。

「会計数字だけを見るのではなく、実際に工場の中で何が起きているのかを確認しよう。」

経営者や管理者への聞き取りだけではなく、工場で働く社員全員を対象として、無記名アンケートを実施しました。

すると、経営側が十分に把握していなかった多くの問題が社員から寄せられました。

社員が知っていた現場の問題

  • 製造途中で材料や副資材が不足し、生産を止めることがある
  • 生産現場へ投入した材料数量が正確に把握されていない
  • 材料倉庫から運び出した数量と実際の使用数量が管理されていない
  • 不良品がどれだけ発生しているのか社員間で共有されていない
  • 不良品を減らすための仕組みが整備されていない
  • 製造担当者の技能にばらつきがあるにもかかわらず、継続的な教育や研修が行われていない
  • 生産計画から必要在庫量を計算しておらず、材料の欠品が発生している
  • 問題が発生しても、それを報告・共有し改善する仕組みがない

一つひとつを見ると、小さな問題に見えるかもしれません。

しかし、これらが積み重なることで、ラインストップ、材料ロス、不良品、手戻り、余分な作業時間などが発生していました。

問題は「社員が報告しないこと」ではなかった

さらに重要だったのは、社員が問題に気づいていなかったわけではないということです。

社員は以前から、多くの問題を知っていました。

しかし、それを会社へ報告し、全員で共有し、改善につなげる仕組みがありませんでした。

報告しても対応されなければ、やがて社員も報告しなくなります。

その結果、同じ問題が繰り返され、それが材料ロスや不良、手戻りとなり、最終的には毎月の限界利益率の変動として試算表に表れていたのです。

試算表の「異常値」は現場からのメッセージだった

今回の業務改善で重要だったのは、限界利益率の変動そのものではありません。

「なぜ、この数字が毎月これほど変わるのか」

という疑問を持ったことです。

もし毎月の試算表を「今月は利益が多かった」「今月は少なかった」と確認するだけで終わっていれば、工場の問題はその後も続いていた可能性があります。

数字の変化には、必ず何らかの理由があります。

その理由を経理データだけで終わらせず、現場まで遡って確認することで、本当の改善対象が見えてきました。

売上を増やさなくても利益は改善できる

業務改善というと、新しいシステムを導入したり、大掛かりな設備投資をしたりすることを想像しがちです。

しかし、本当に重要なのは、会社の中から毎日少しずつ流出している利益を見つけ、それを止めることです。

材料ロス、不良品、手戻り、作業停止、過剰在庫、欠品。

一つひとつは小さくても、年間を通じれば大きな金額になります。

売上高が変わらなくても、会社から垂れ流されているお金を減らすことができれば、利益は必ず上向きます。

業務改善は「数字」と「社員の声」から始まる

そのために必要なのは、毎月の数字について疑問を持つ場をつくることです。

そして、経営者が知らない現場の事実を、社員から教えてもらう仕組みをつくることです。

今回のような無記名アンケートは、そのための有効な方法の一つです。

ただし、アンケートを取るだけでは意味がありません。

社員から出てきた問題を経営者が受け止め、「ここから全員で会社を良くしていこう」という意思を明確にし、社員と一緒に改善活動を続けることが重要です。

試算表に表れた一つの数字から現場へ入り、社員が知っている事実を集め、原因を一つずつ改善する。

これが、私たちが考える業務改善です。


数字は出ている。でも、なぜ利益が増えないのか。

売上はあるのに利益が残らない、粗利益率や限界利益率が毎月変動する、在庫や不良の実態が分からない――。

その原因は、試算表だけではなく、現場の仕事の流れの中にあるかもしれません。

三尾会計事務所では、会計数字の分析だけでなく、社員アンケートや業務フローの確認を通じて、利益を阻害している根本原因を一緒に探します。