社長が急逝したとき、後継者が最初に確認すべきこと

社長が急逝したとき、最初に考えるべきこと
社長が突然亡くなったとき、後継者は短期間のうちに多くの判断を迫られます。
取引先への対応、銀行への連絡、社員への説明、役員変更、相続、自社株、資金繰り――。
何から手を付ければよいのか分からないまま、「とにかく会社を動かさなければ」と走り始める方も少なくありません。
しかし、こうしたときに最初に行うべきことは、すべての問題を一度に解決することではありません。
まず必要なのは、会社の中で「お金」と「情報」がどのように流れているのかを把握することです。
最優先は「会社を止めないこと」
社長が急逝した場合、相続の問題はもちろん重要です。
しかし会社は、社長が亡くなった翌日からも動き続けます。
給与を支払わなければなりません。仕入先への支払いがあります。得意先へ請求書を出さなければ入金されません。銀行借入の返済も続きます。
つまり後継者にとって、まず重要なのは、
「この会社は、どうやってお金を生み、どうやってお金を支払っているのか」
を把握することです。
ここが分からないまま経営判断を始めることは、会社の計器を見ずに運転するようなものです。
最初に確認するのは「お金の流れ」
まず確認したいのは、会社のお金がどのように動いているかです。
特に急いで確認する必要があるのは、次のような内容です。
- 売上はどこで発生しているのか
- 誰が請求書を作成しているのか
- 得意先からいつ入金されるのか
- 仕入先や外注先への支払いはいつ行われるのか
- 給与は誰が、どのシステムで計算しているのか
- 銀行振込は誰が行っているのか
- 借入金はいくらあり、毎月いくら返済しているのか
特に、経理システム、給与計算、請求、支払いの4つは大至急確認する必要があります。
中小企業では、こうした業務を一人の経理担当者や社長自身が管理していることも珍しくありません。
「毎月いつ、誰が、何をしているのか」を一覧にするだけでも、会社の状態はかなり見えるようになります。
次に「情報の流れ」を確認する
もう一つ重要なのが、情報です。
会社では、お金が動く前に必ず情報が動いています。
営業担当者が仕事を受注する。現場が商品やサービスを提供する。請求情報が経理へ届く。経理が請求書を発行する。得意先から入金される。
この情報の流れのどこかが止まれば、売上があっても現金は入ってきません。
そこで後継者は、
「どの部署が、どの情報を生み出しているのか」
を確認する必要があります。
例えば、営業から経理へ請求情報がどのように渡っているのか。現場の勤怠情報が給与計算へどうつながっているのか。仕入や外注費の支払承認を誰が行っているのか。
こうした流れを把握すると、会社の実際の仕組みが見えてきます。
創業社長の会社ほど「頭の中」に情報がある
特に注意が必要なのが、創業社長が長年経営してきた会社です。
創業者自身が、
「この得意先はこう対応する」
「この仕入先への支払いはこの日にする」
「この社員にはこの仕事を任せる」
といった判断をすべて頭の中で行っていることがあります。
会社としては問題なく動いているように見えても、実際には、
会社の仕組みではなく、社長個人の経験と判断で動いている
ことがあります。
社長が突然いなくなると、その瞬間に「見えなかった問題」が一気に表面化します。
後継者がまず行うべきなのは、先代と同じ判断をしようとすることではありません。
誰が何を知っているのか。誰がどの仕事を担当しているのか。どの情報がどこへ集まっているのか。
これを一つずつ見えるようにすることです。
相続の確認も同時に始める
会社運営を止めないことが最優先ですが、相続についてもできるだけ早く確認を始める必要があります。
特に確認したいのは、次の点です。
- 自社株を誰が相続するのか
- 自社株の評価額はいくらになるのか
- 相続税はいくら程度になるのか
- 納税に使える預貯金がどの程度あるのか
- 会社への貸付金などがないか
- 遺言書があるか
- 事業承継税制を利用できる可能性があるか
相続税には申告期限があります。
しかも、自社株の評価額が高い会社では、相続財産の大半が株式となり、相続税は発生するのに納税する現金がないということが起こります。
そのため、相続については「落ち着いてから考える」のではなく、会社運営の確認と並行して早期に専門家へ相談することが重要です。
後継者が全部分かる必要はない
突然会社を引き継いだ後継者が、短期間ですべてを理解することはできません。
むしろ大切なのは、
「分からないことが何なのか」を把握すること
です。
お金の流れ。情報の流れ。社員の役割。得意先との関係。銀行との関係。そして自社株と相続。
これらを一つずつ整理していけば、会社は徐々に見えるようになります。
社長が急逝したとき、本当に必要なのは、先代社長と同じ経営者になることではありません。
まず会社の仕組みを把握し、会社を止めず、そのうえで自分自身の経営の形を作っていくことです。
実際の解決事例
三尾会計事務所では、先代社長の急逝により、公務員から突然会社を引き継いだ後継者からご相談を受けた事例があります。
相続税申告期限まで残りわずかという状況で、自社株にかかる多額の相続税問題に対応するとともに、その後は社員アンケートを活用し、会社運営の課題整理まで支援しました。
相続税の問題と、後継者として会社を運営していく不安。この二つを同時に整理した事例です。
先代社長が急逝。自社株の相続税と会社運営の不安を同時に解決した事例はこちら
突然の事業承継や、後継者として会社運営に不安を感じている方は、まず「お金と情報の流れ」を整理するところから始めてみてください。


