借入でアパート経営を始める前に|満室・今の金利を前提にしてはいけない理由

「家賃収入で借入を返せるので、アパート経営は安定した投資です。」
このような説明を受けて、借入を利用して賃貸物件を購入したり、土地にアパートを建てたりする方がいます。
しかし、今は10年前と同じ感覚で考えてよい環境ではありません。
建設費は上昇し、金利も上がり始めています。 一方で、建設費の上昇分をそのまま家賃へ転嫁できるとは限りません。
借入で賃貸経営をするなら、「満室なら返せる」では足りません。
入居率が下がる。金利が上がる。修繕費が発生する。その状態でも借入を返し続けられるかまで確認して、初めて投資判断ができます。
建築費が上がれば、同じ家賃でも利回りは下がる
アパート経営の採算を考えるうえで、まず大きく変わったのが建設費です。
材料費、人件費、設備費などの上昇によって、建物を取得するための金額そのものが大きくなっています。
ところが、建設費が20%上がったからといって、家賃も20%上げられるとは限りません。
入居者が支払える家賃には、地域の所得水準や周辺物件の家賃相場があります。
建築費は市場価格で決まり、家賃は入居者が支払える金額で決まる。
この2つが同じ速度で上がるとは限りません。
その結果、
建築費は高くなったのに、取れる家賃はそれほど増えず、投資利回りだけが低下する
という状況が起こります。
表面利回りだけでは、借入を返せるか分からない
不動産投資では「利回り○%」という数字がよく使われます。
しかし、本当に重要なのは表面利回りではなく、 借入返済後に現金がいくら残るかです。
例えば年間家賃収入が1,000万円あったとしても、 そこから、
- 空室による減収
- 管理費
- 固定資産税
- 火災保険等
- 原状回復費
- 日常修繕
- 大規模修繕の積立
- 借入元金・利息
が出ていきます。
このすべてを引いた後に残る現金こそ、 実際の投資成果です。
満室前提の計画は危ない
新築時は入居率が高くても、 30年間ずっと満室という保証はありません。
近隣に新しい物件が建つかもしれません。 人口構成が変わるかもしれません。 建物が古くなれば、新築物件との競争も起こります。
そこで、借入で賃貸物件を取得する場合には、 私は少なくとも、
「入居率80%でも返せるか」
という条件で一度収支を作り直してみるべきだと考えています。
100%入居でしか成立しない投資は、 わずかな空室で資金繰りが悪化します。
現在の金利ではなく「+2%」でも計算する
もう一つ重要なのが金利です。
借入期間が20年、30年となれば、 現在の金利が最後まで続くとは限りません。
そこで、
現在の借入金利 + 2%
でも返済後のキャッシュフローがプラスになるか確認する。
これも、長期借入をする場合のストレステストとして有効です。
金利が1%上がっただけでも、多額の借入では年間の利息負担が大きく変わります。
さらに2%上がっても資金が回るのであれば、 投資としての安全余力はかなり違います。
30年間の修繕費を入れて初めて、本当の収支になる
建物は時間とともに劣化します。
外壁、防水、給排水、空調、給湯器、共用設備など、 長期保有すれば必ず更新時期が来ます。
ところが、当初の投資計画では、 こうした大規模修繕が十分に入っていないことがあります。
最低でも確認したい30年間の収支
- 家賃は将来も同額でよいか
- 空室率を見込んでいるか
- 金利上昇を入れているか
- 大規模修繕を入れているか
- 管理費・税金・保険を入れているか
- 返済後に毎年いくら現金が残るか
「自己資金」と「借入」では、同じ利回りでも意味が違う
ここは非常に重要です。
例えば自己資金で建物を取得した場合、 思ったほど家賃が取れなくても、 直ちに借入返済に困ることはありません。
利回りが低ければ、
「期待したほど儲からなかった」
という問題になります。
しかし借入の場合は違います。
自己資金で取得
賃料が下がれば収益性は低下するが、借入元利金の返済義務はない。
借入で取得
賃料が下がっても、空室が出ても、借入返済は続く。
同じ利回り5%でも、自己資金5%と、借入を抱えた5%ではリスクが全く違います。
返済原資が「家賃だけ」の人ほど慎重に考える
借入そのものが悪いわけではありません。
重要なのは、 借入を何から返すのかです。
例えば、複数の事業収入や多額の手元資金を持つ企業であれば、 一つの不動産収入が多少落ちても、 他のキャッシュフローで補える場合があります。
一方、個人オーナーが、
「この物件の家賃だけで、この物件の借入を返す」
という計画であれば、 空室や修繕、金利上昇の影響をそのまま受けます。
返済原資が一つしかない投資ほど、厳しい条件で収支を確認する必要があります。
土地の場所と家賃相場を無視してはいけない
賃貸物件の採算は、 建物だけでは決まりません。
最も大きいのは「場所」です。
同じ建築費でも、
- 都心か郊外か
- 駅から何分か
- 周辺人口が増えているか減っているか
- 単身者向けかファミリー向けか
- 周辺の坪当たり家賃はいくらか
- 中古物件として売却できる地域か
によって、投資結果は全く変わります。
「いくらで建てられるか」より先に、「その場所でいくらの家賃を何年間取れるか」を確認する。
投資前に行いたい「4つのストレステスト」
借入で賃貸物件を取得する前に、 最低でも次の4パターンを作ってみることをおすすめします。
満室でなくても返済できるか。
金利上昇後も現金が残るか。
築年数が進んでも収支が成立するか。
修繕年にも資金ショートしないか。
この条件を一つずつではなく、 複数同時に起きても耐えられるかを見ることも大切です。
例えば、
入居率80% + 金利2%上昇 + 修繕発生
という条件でも資金が回るかを確認します。
良い投資かどうかは、順調なときではなく、悪い条件でも返済できるかで判断する。
借入を利用する以上、この視点は欠かせません。
相続税対策として建てる場合は、さらに別の検討が必要
ここまでの話は、純粋な不動産投資としての判断です。
一方、 「相続税対策としてアパートを建てたい」という場合は、 投資採算だけでは判断できません。
相続税評価、借入金、遺産分割、納税資金、誰が不動産を引き継ぐかまで含める必要があります。
相続税対策として賃貸物件を検討している方へ
相続税対策を目的として賃貸物件を取得・建築する場合は、投資採算だけで判断することはできません。
相続税評価、借入金、遺産分割、納税資金、誰が不動産を引き継ぐのかまで含めて検討する必要があります。
相続税対策として賃貸物件を検討している方へ
相続税対策を目的として賃貸物件を取得・建築する場合は、投資採算だけで判断することはできません。
相続税評価、借入金、遺産分割、納税資金、誰が不動産を引き継ぐのかまで含めて検討する必要があります。
まとめ|借入でアパート経営をするなら「悪いケース」から見る
アパート経営や賃貸物件投資が、すべて悪いということではありません。
問題なのは、
- 満室を前提にする
- 現在の低い金利だけで計算する
- 建物の修繕費を十分に入れない
- 家賃が下がらない前提にする
- 表面利回りだけで判断する
ことです。
借入をする以上、 収入が減っても返済は続きます。
満室・現在金利で儲かるかではなく、
入居率80%・金利+2%でも返せるか。
そこまで確認してから、借入をするかどうかを判断することが大切です。
投資採算そのものについて詳しく知りたい方へ
相続税対策として賃貸物件を建てる場合でも、投資として採算が合うかどうかの確認は欠かせません。
入居率、金利上昇、修繕費、家賃下落まで含めた長期キャッシュフローについては、こちらの記事で詳しく解説しています。


