借金は怖い。でも「返し続けること」でしか作れない信用がある

起業するとき、「できるだけ借金をしたくない」と考える人は少なくありません。 もちろん、借りたお金は返さなければなりません。 売上が予定どおり上がらなくても、返済日はやってきます。

だから、返す見込みもないのに借りることを勧めるつもりはありません。

しかし、若い経営者にはもう一つ知っておいてほしいことがあります。

借りたことのない人には、「きちんと返し続けてきた」という信用をつくることもできません。

借入金は返済すれば減っていきます。しかし、約束どおり返済してきた実績は、経営者と会社の信用として積み重なっていきます。

借入

返済義務はあります。しかし、原則として会社の株式を渡す必要はありません。

返済

毎月の返済は、お金を減らすだけでなく、金融機関との取引実績を積み重ねます。

出資

通常の借入のような返済はありませんが、会社の株式、つまり経営に関わる権利の一部を渡します。

毎月返すことは、毎月信用を積み上げること

例えば創業時に金融機関から500万円を借りたとします。

毎月、約束した日に、約束した金額を返していく。

一見すると、単に「借金を返している」だけに見えるかもしれません。

しかし、その裏側では、

  • 事業を続けている
  • 売上をつくっている
  • 資金を管理している
  • 返済資金を残している
  • 約束した日に返済している

という実績が毎月積み重なっています。

借入残高は減っていく。
しかし、信用は積み上がっていく。

もちろん、金融機関は返済実績だけを見て融資するわけではありません。

売上、利益、財務内容、資金繰り、今後の事業計画などを総合的に判断します。

それでも、「借りて、約束どおり返してきた」という事実は、次に資金が必要になったときの大切な取引実績になります。

会社は、成長するとお金が必要になる

「借金は会社が苦しくなったときにするもの」と考えている人もいます。

しかし実際には、事業が順調になったときほど資金が必要になることがあります。

  • 売上増加に伴って仕入代金が増える
  • 売掛金が増え、入金までの運転資金が必要になる
  • 社員を採用する
  • 設備や機械を購入する
  • 新しい店舗や営業所を開設する
  • システムを導入する
  • 新商品や新サービスを開発する

つまり、会社が成長すれば運転資金と投資資金が必要になります。

① 売上が安定する
② 利益とキャッシュが見えるようになる
③ 毎月返済できる金額が分かる
④ 借入によって設備・人材・運転資金へ投資する
⑤ 事業をさらに成長させる

返済する見込みが数字で確認できるのであれば、借入金を使って次の成長に投資することは、決して悪いことではありません。

逆に、「借金をしたくない」という理由だけで自己資金が貯まるまで何年も待てば、事業機会を逃すこともあります。

借入と出資は、同じ「資金調達」ではない

もう一つ、起業する人にぜひ知っておいてほしいのが、借入と出資の違いです。

借入で渡すもの

金融機関からお金を借りれば、元金を返し、利息を支払います。

返済が終われば、その借入についての返済義務も終わります。

出資で渡すもの

一方、出資の場合、通常の借入金のように毎月元金を返済する必要はありません。

しかし、その代わりに投資家へ渡すものがあります。

それが「株式」です。

株式を渡すということは、単に資金を受け取ることではありません。会社の所有や意思決定に関わる権利の一部を他の人に持ってもらうということです。

会社が成功したときこそ、株主との関係が重要になる

起業したばかりのときは、

「こんな会社に500万円も出資してくれるのだからありがたい」

と思うかもしれません。

しかし、投資家との関係で考えておかなければならないのは、会社が失敗したときだけではありません。

むしろ会社が成功したときです。

売上が伸びる。利益が増える。会社の価値が高くなる。

そうなると株主から、

  • もっと利益を出してほしい
  • 配当をどうするのか
  • この投資をやるべきではない
  • 経営方針を変えてほしい
  • 役員を入れたい
  • 会社を売却した方がよいのではないか

といった意見が出る可能性があります。

もちろん、出資者のすべてが経営に口を出すという意味ではありません。

資金だけでなく、人脈、知識、経験、販路などを提供してくれる素晴らしい投資家もいます。

問題なのは、「お金を出してくれるから」という理由だけで、株式を渡してしまうことです。

出資を受ける前に考えてください。

その人からお金を受け取ることではなく、その人とこれから10年、20年、株主として付き合っていけるかを考える必要があります。

「3分の1」という数字を知っておく

特に知っておいてほしい数字があります。

議決権の「3分の1」です。

会社法上、合併や定款変更など一定の重要事項については、株主総会の「特別決議」が必要になります。

特別決議は原則として、一定の定足数を満たしたうえで、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要です。

したがって、他の株主が3分の1を超える議決権を持つ場合、その株主の反対によって成立しない重要事項が出てくる可能性があります。

つまり、

「自分が51%を持っているから、自分の好きなように決められる」

とは限らないのです。

実際の決議要件は会社の定款、株式の種類、会社の機関設計などによって異なるため、出資を受ける際には個別の確認が必要です。

しかし、若い経営者には少なくとも、

株式を渡すことは、将来の意思決定権の一部を渡すことでもある。

ということを覚えておいてほしいと思います。

500万円の借入と500万円の出資を比べてみる

500万円を借りた場合

  • 会社に500万円が入る
  • 元金を返済する
  • 利息を支払う
  • 毎月の資金繰りに返済負担が生じる
  • 完済すれば借入は終了する
  • 株式を渡す必要はない

500万円の出資を受けた場合

  • 会社に500万円が入る
  • 通常の借入のような毎月の元金返済はない
  • 投資家へ株式を渡す
  • 株主として経営に関わる権利を持つ
  • 会社が成長すれば株式価値も大きくなる
  • 株主との関係は長期間続く可能性がある

例えば創業時、500万円の出資を受ける代わりに30%の株式を渡したとします。

会社にほとんど価値がない創業時には、「500万円も出してくれるならありがたい」と感じるでしょう。

しかし、その会社が成長して、将来3億円の価値を持つ会社になったとします。

単純計算なら30%は9,000万円相当です。

もちろん実際の株式価値は単純な比例計算で決まるものではありません。

それでも重要なのは、

出資は「返さなくてよいお金」ではないということです。

現金ではなく、会社の将来価値と経営に関する権利の一部を渡していると考える必要があります。

起業時の資金調達は、借りられる金額だけで決めるものではありません。

借入・自己資金・出資のどれを使うべきか、将来の資金繰りと経営権まで含めて考えることが重要です。

起業・創業について相談する

だから「借金をしなさい」という話ではない

ここは誤解してほしくありません。

借りられるだけ借りた方がよい、という話ではありません。

出資を受けてはいけない、という話でもありません。

大切なのは、両方の性格を理解したうえで選択することです。

借入

返済義務がある
その代わり、通常は経営権を渡さない。

出資

元金返済は原則不要
その代わり、株式を渡す。

判断基準

今のお金だけを見ない
5年後、10年後の経営まで考える。

私なら、まず「返せる会社」をつくる

事業から安定した収入が生まれるようになった。

利益も出るようになった。

資金繰りも見えるようになった。

そして、

「毎月これだけなら十分返済できる」

という数字が分かるようになった。

そのとき、借入は会社を成長させるための有力な選択肢になります。

借りる
事業へ投資する
利益を生み出す
約束どおり返す
信用を積み上げる
次の投資につなげる

これを繰り返すことができれば、金融機関との関係も変わってきます。

毎月自信を持って返済できること自体が、経営力の一つなのです。

起業するとき、「いくら集めるか」だけを考えない

起業時には、

「いくら資金を集められるか」

に目が向きがちです。

しかし、本当に考えるべきなのは、

誰から、どんな条件で、そのお金を受け取るのか。

ということです。

借入なら、

「そのお金を何に使い、どうやって返すのか」

を考える。

出資なら、

「この人と株主として長く付き合っていけるのか」

を考える。

株式は、一度渡してしまえば簡単に元へ戻せるものではありません。

若い起業家に伝えたい3つのこと

1.借金を怖がる前に、「返せる事業」をつくる。

2.出資を喜ぶ前に、「何を渡すのか」を考える。

3.資金調達を、「お金集め」ではなく「会社の未来を設計すること」と考える。

借りたお金は返さなければなりません。

しかし、借りたことのない人には、返し続けることによって得られる信用もありません。

毎月、自信を持って返す。

その信用を積み重ね、次に本当に必要なときに資金を調達して、新しい事業へ投資する。

それも会社を育てていく大切な方法です。

起業するときほど、

「今、いくらお金が必要か」だけではなく、
「将来、どんな会社をつくり、どんな経営者でいたいのか」から資金調達を考えてください。
起業時の資金調達・事業計画・資金繰りを一緒に考えます

創業融資を受けるべきか、自己資金で始めるべきか、出資を受けるべきか。数字をもとに将来の経営まで考えることが重要です。

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