経理担当者が突然辞めたとき、社長が最初にやるべきこと

「経理担当者が退職することになった」

それまで経理を一人に任せていた会社ほど、この瞬間に大きな不安が生まれます。

請求書は誰が出すのか。

月末の支払いは何があるのか。

給与計算はどうするのか。

入金漏れは起きないか。

特に、営業や現場を中心に会社を引っ張ってきた社長の場合、経理の細かな流れまでは把握していないことも珍しくありません。

経理担当者が辞めたときに最も重要なのは、
「代わりの人をすぐ探すこと」ではなく、 「会社のお金と情報の流れを止めないこと」です。

最初に確認するのは「支払い」より「請求」です

経理担当者がいなくなると、多くの経営者はまず「月末の支払いをどうしよう」と考えます。

もちろん支払いは重要です。

しかし、それ以上に先に確認したいのが、売上の請求です。

請求書が発行されなければ、そもそも会社にお金が入ってきません。

誰に請求するのか

売上情報を持っている担当者を確認します。

いつ請求するのか

締日と請求書発行日を整理します。

いくら請求するのか

契約内容や売上データと照合します。

いつ入金されるのか

得意先ごとの入金条件を確認します。

まず「お金が入る流れ」を止めない。

そのうえで「お金が出ていく流れ」を整理するのが基本です。

次に、月末までに必要な支払いを一覧にする

請求の確認ができたら、次に支払いです。

ここでは完璧な経理帳簿を作る必要はありません。

まずは、月末までに何を払わなければならないかを把握することが優先です。

外注費
仕入代金
社員給与
家賃
社会保険料
口座引落
借入金返済
その他定期支払

この一覧を作るだけでも、社長の不安はかなり減ります。

経理の復旧では、最初から100点を目指す必要はありません。
まず「会社のお金が止まらない状態」を作ることが最優先です。

経理担当者がいなくても、情報は会社の中に残っている

「経理担当者しか分からないので、もう何も分かりません」と言われることがあります。

しかし実際には、経理に必要な情報の多くは各部署に残っています。

営業担当者は、誰に何を売ったかを知っています。

購買担当者は、どこから何を仕入れたかを知っています。

現場担当者は、どの外注先に仕事を依頼したかを知っています。

人事や管理担当者は、社員の勤怠情報を持っています。

経理担当者が辞めても、経理に必要な「元データ」まで消えるわけではありません。

問題は、それまで誰が、どの情報を、どのタイミングで集めていたのかが見えなくなることです。

その流れを一つずつ聞き取れば、経理業務はかなりの部分まで復旧できます。

「経理担当者が退職して、何から始めればよいか分からない」
「請求や支払いを止めたくない」
という段階でもご相談いただけます。

今の状況を相談する →

すべてを新しい経理担当者に戻さない

経理担当者が退職すると、「早く次の経理担当者を採用しなければ」と考えがちです。

しかし、同じやり方をそのまま引き継ぐと、また一人に業務が集中します。

そして、その人が休職したり退職したりしたとき、同じ問題が起こります。

この機会に、業務を分けて考えることが重要です。

社内に残す仕事

売上情報の収集、請求内容の確認、支払情報の収集など、事業に近い業務。

外部化しやすい仕事

会計入力、給与計算、年末調整、月次集計、決算・申告など。

特に給与計算は、社員の個人情報や給与情報を扱うため、社内の誰にでも任せられる業務ではありません。

こうした業務だけ外部へ出し、日常の情報収集は社内で行うという分担も有効です。

経理アウトソーシングの目的は「代わりに作業すること」ではない

経理アウトソーシングというと、記帳代行をイメージする方も多いかもしれません。

しかし、経理担当者が突然いなくなった会社で本当に必要なのは、それだけではありません。

重要なのは、

誰が売上情報を持っているか
誰が支払情報を持っているか
どの資料をいつ集めるか
誰が最終確認するか
誰が銀行振込を承認するか
毎月どの数字を社長に報告するか

という流れを作ることです。

つまり、経理の「作業」を代わりにするのではなく、経理の「仕組み」を再構築することです。

経理が整うと、社長は本業に戻れる

経理に不安があると、社長は本来の仕事に集中できません。

「あの請求書は出したのか」

「支払いを忘れていないか」

「給与はちゃんと振り込めるのか」

こうしたことを毎日考えていれば、営業や顧客対応、採用、事業戦略に使う時間がなくなってしまいます。

経理の流れが安定すると、社長はようやく本業へ戻れます。

経理アウトソーシングの一番大きな効果は、
社長が経理から解放されることかもしれません。

さらに一歩進めると「経営数字」が見えるようになる

請求、入金、支払い、給与などの情報が毎月一定のルールで集まるようになると、それはそのまま会計データにつながります。

すると、単に経理が止まらないだけではなく、毎月の売上、利益、資金繰りを早く確認できるようになります。

さらに、年度末までの決算予測もできるようになります。

ここまで進むと、経理は「後処理」ではなく、経営判断のための情報になります。

実際の解決事例――経理担当者の退職から半年で不安を解消

当事務所でも、経理担当者の退職により、月末の支払い方法さえ分からなくなった会社からご相談を受けました。

最初は請求状況を確認し、給与と月末支払いを優先順位順に復旧しました。

初月と翌月は当事務所が実務の多くを担当し、3か月目から社内の社員にも請求・支払準備へ参加してもらいました。

半年ほどで、社長が最も心配していた入金漏れや支払遅延への不安はほぼ解消。

その後は決算・申告も含めて支援し、毎月の数字と決算予測まで共有できるようになりました。

経理の属人化は、担当者が辞める前に見直せる

今回のような問題は、経理担当者が辞めて初めて表面化することが多いものです。

しかし、本当は退職前から確認できます。

経理担当者しか分からない仕事がある
業務マニュアルがない
社長が支払予定を把握していない
請求の進捗が一覧になっていない
月次決算が遅い
経理担当者が休むと業務が止まる

一つでも思い当たる場合は、経理の属人化が進んでいる可能性があります。

経理担当者が辞めても会社が止まらない。
その状態を作っておくことが、本当の経理の仕組み化です。