相続した共有不動産を売却できないときの解決方法|三尾会計事務所

相続で共有になった不動産は、放置しても自然には解決しません

最初に確認するのは、現在の共有が「遺産分割前」なのか「遺産分割後」なのかという点です。そのうえで、不動産の評価額、売却後の税金、債務、共有者の資金力まで含めて出口を考えます。

「相続した実家を売却したいが、兄弟の一人が反対している」「賃貸物件を共有で相続したものの、修繕や管理について意見が合わない」。不動産を複数人で共有すると、このような問題が起こりやすくなります。

不動産は預金のように簡単に分けられません。家への愛着、居住の必要性、賃料収入への期待、老後資金の状況などが人によって違うからです。感情的な話し合いを続けるだけでは、解決までの時間と費用が増えてしまいます。

最初に「どの段階の共有か」を確認する

遺産分割が終わっていない

誰が不動産を取得するか決まっていない段階です。原則として、遺産分割協議や家庭裁判所の遺産分割調停・審判による解決を検討します。

遺産分割後に共有となった

遺産分割協議などによって共有持分が確定した状態です。話し合いで解消できなければ、共有物分割請求を検討します。

この区別によって選ぶ手続きが変わります。登記事項証明書、遺言書、遺産分割協議書、相続関係図などを確認することが出発点です。

不動産全体の売却には全員の合意が必要

各共有者は自分の持分を処分できますが、不動産全体を一般市場で売却するには、原則として共有者全員の合意が必要です。一人でも反対すれば、通常の一括売却は進められません。

ただし、反対者がいるからといって、共有関係を永久に続けなければならないわけではありません。通常の共有関係であれば、各共有者は原則として共有物の分割を求めることができます。

共有不動産を解消する3つの方法

1.現物分割
土地を分筆するなど、現物のまま分ける方法です。建物がある土地や、分筆すると利用価値が下がる土地には適さないことがあります。

2.一人が取得して金銭を支払う方法
一人または複数の共有者が不動産を取得し、他の共有者へ持分価格に相当する金銭を支払います。取得する側の資金力が重要です。

3.売却して代金を分ける方法
現物分割が難しく、取得希望者にも十分な支払能力がない場合には、不動産を売却して代金を分ける方法を検討します。

どの方法が適切かは、不動産の形状、利用状況、評価額、共有者の意向と資力によって異なります。「反対者がいるから直ちに競売になる」というものではありません。

過半数の持分があっても自由に売却はできない

共有物の通常の管理に関する事項は、原則として持分価格の過半数で決めます。このため、通常修繕や一定の管理方法については、過半数を持つ側が一定の主導権を持つことがあります。

一方、不動産全体の売却や重要な変更まで過半数だけで決められるわけではありません。賃貸借についても契約内容や期間によって取扱いが異なるため、「持分が50%を超えれば何でも決められる」と考えるのは危険です。

共有不動産の現状と手取り額を整理しませんか

登記、取得費、相続税、借入金、敷金などの資料から、解決後に残る金額を確認します。

今の状況を相談する

競売を避け、任意売却による和解を目指す

裁判で売却が必要と判断された場合、最終的に競売となる可能性があります。しかし、競売では売却時期や条件を当事者が自由に決めにくく、一般市場での任意売却より有利な価格になる保証もありません。

そこで実務では、判決だけを求めるのではなく、手続きの途中で和解し、共有者全員の協力によって一般市場で売却する道も検討します。

和解のために用意したい共通資料

  • 複数の不動産会社による査定額
  • 共有者が買い取る場合の資金計画
  • 売却諸費用と譲渡所得税の概算
  • 借入金、敷金、保証金などの債務
  • 売却後に各共有者へ残る手取り額

「売るか、残すか」という対立を、「それぞれの方法で手元にいくら残るか」という数字の比較に置き換えることが、合意形成の第一歩になります。

売却価格ではなく最終手取り額で判断する

手取り額の基本的な計算

売却代金
− 仲介手数料・測量費・登記費用
− 借入金や敷金・保証金等の精算
− 譲渡所得税・住民税
− 弁護士等の手続費用
− 必要に応じた遺留分侵害額等の支払い
= 分配可能な手取り額

土地・建物の譲渡所得は、売却代金から取得費と譲渡費用などを控除して計算します。相続した不動産では、原則として被相続人の取得費と取得時期を引き継ぎます。

古い不動産で購入時の契約書などが見つからない場合は、取得費を十分に証明できず、税負担が大きくなる可能性があります。売却を決める前に、過去の契約書、領収書、借入資料、建築関係資料などを探すことが重要です。

また、相続税を納めた人が相続財産を一定期間内に売却した場合には、相続税額の一部を取得費へ加算できることがあります。一般に「相続開始から3年10か月以内」と説明されますが、正確な期限と適用額は個別に確認する必要があります。

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共有トラブルを減らす遺言書の作り方

不動産を持つ方が「子どもたちへ平等に残したい」と考え、全員に共有させることがあります。しかし、持分を等しくすることと、相続後の負担や使い勝手を公平にすることは同じではありません。

遺言書では、単に持分割合を書くのではなく、次のような出口まで決めておくことが重要です。

  • 不動産を一人に相続させ、他の相続人には預貯金や代償金を渡す
  • 不動産を売却し、税金と費用を控除した残額を分配する
  • 売却や精算を実行する遺言執行者を指定する
  • 代償金や納税資金を生命保険・預貯金などで準備する
  • 遺留分を含め、相続人間に著しい不公平が生じないか確認する

遺言書があれば争いを完全に防げるとは限りません。しかし、不動産の取得者、処分方法、費用負担、現金の分配方法まで明確にしておけば、共有によって判断が止まる危険を大きく減らせます。

法律・税金・資金を一緒に整理する

共有不動産の解決では、法律手続きだけでも、税金の計算だけでも十分とは限りません。売却方法によって価格と税負担が変わり、税負担によって和解できる金額も変わるからです。

まず、登記、相続関係、利用状況、収支、取得費、債務を整理し、「共有者が取得する場合」と「売却する場合」の手取り額を比較します。そのうえで、必要に応じて弁護士、不動産会社、司法書士等と連携し、実行可能な解決方法を組み立てます。

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※本記事は一般的な制度の説明です。遺産分割と共有物分割のどちらを利用するか、売却方法、税額、特例の適用可否は、相続開始時期、登記内容、共有関係、取得費、利用状況などによって異なります。

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